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『二月の勝者』中学受験のリアルを突く柳楽優弥“黒木”の台詞が刺さりまくるワケ

理由3 黒木のキャラクターが面白い

 当初、黒木は拝金主義者に映った。弟1話でこう言ったからだ。 「子供を合格に導くのは、父親の経済力と母親の狂気」(黒木)  ところが、黒木自身は金に執着しない男だった。無料塾に惜しみなく資金を投じていたくらいなのだから。自分の合格実績を挙げるために子供たちを指導しているわけでもない。それは子供たちの呼び方で分かる。「上杉さん」「柴田さん」「三浦さん」…。小学生の生徒を「さん」付けで呼ぶ小学校教師、塾講師は少数派だろう。黒木が子供たちの人格を尊重している表れにほかならない。

理由4 ストーリーが面白い

「桜花」の新任講師・佐倉麻衣(井上真央)の成長記なども織り込まれ、飽きさせない。  弟1話で麻衣は元公立中の教師だったことが明かされた。ダンス部の顧問だった。部のキャプテンは成績が学年トップ。このため、名門私立大付属校の特待生推薦を受けられるチャンスがめぐってきた。  ところが入試日とダンス大会の決勝が重なってしまう。麻衣はキャプテンに入試を受けさせるが、そのために決勝はポロボロ。部員は麻衣に向かって「あんたのこと一生恨んでやる」と呪いの言葉を口にする。その上、キャプテンは不合格。答案用紙に麻衣への恨み節をびっしり書き連ねたからだ。この件があったため、麻衣は「桜花」にやってきた。  しかし「桜花」でも失敗を繰り返した。だから第10話の麻衣は黒木にこう漏らす。 「私は…いつも子供たちのことを考えて、寄り添って、やってるつもりなんですが、うまくいかなくて…」  そして「黒木先生はすごいと思います」と思いを伝えた。  ところが黒木はそれを強く否定した。「私は何も分かっていません」。過去、子供たちを偏差値の高い中学に入れることが正しいと思っていたが、それによって1人の子供の学力と中学のミスマッチが起こり、その子供が不登校に。家庭は崩壊してしまった。 「子供にとって良かれと思ったことが、その子の人生、潰してしまったんです」(黒木)  麻衣の過去の失敗とも重なり合う。うまいストーリーだった。最終回も期待できそうだ。 <文/高堀冬彦>
放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員
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