更新日:2022年09月02日 12:26
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「ウマ娘」ファンの競馬ビギナーでも通になれる。2022年注目3歳馬を元競馬誌編集長が解説

ディープ最後の大物か。ホープフルS覇者キラーアビリティ

 キラーアビリティはここまで4戦2勝。新馬戦、萩Sと2度の敗戦を喫しています。とはいえ、新馬戦はレース前に他の馬が放馬して大暴れしたレースで参考外、萩Sは道中でずっと折り合いを欠いていました。未勝利戦で記録した1分59秒5はレコードタイムで、ホープフルSの勝ち時計、2分0秒6はG1昇格後の最速記録。自分の力さえ出し切れれば、爆発的な走りをみせるスピードスターです。  筆者は、デビュー前に同馬を育成したノーザンファーム空港を取材していました。育成担当の木村厩舎長は「(キラーアビリティの)セールスポイントはとにかく脚が速いところ」とおっしゃっており、それを裏付ける競走成績となっています。  この馬の通ぶりポイントは「ポストディープ」。同馬はディープインパクト産駒なのですが、ディープインパクトは2019年に死亡しているため、フルシーズン種付けをこなしたのはこの世代が最後になります。  偉大な種牡馬は晩年に後継馬を残すという説があり、実際に、サンデーサイレンスも、最終から1つ前の世代でディープインパクトを送り出しました。キラーアビリティがクラシックを手にするということは、そのまま後継馬レースの最有力候補に浮上することを意味しています。  ディープ産駒なき競馬界の覇権を握るのは、しのぎを削ったハーツクライか、世界を制したロードカナロアか、それとも大物を次々と出しているエピファネイアか。まだ、その決着はついておらず、2022年のクラシックは「ポストディープ」を占ううえでも重要です。

2歳G1を使わずクラシックに備えたイクイノックス

 この2頭を凌駕するかもしれない、底知れぬ魅力を秘めているのがイクイノックスです。同馬は新馬、東京スポーツ杯2歳Sを連勝中。暮れのG1を使わずに、クラシックに備えています。新馬戦は、後の2歳女王サークルオブライフや、未勝利、エリカ賞とレコードで連勝するサトノヘリオスらを相手に圧勝。  東京スポーツ杯2歳Sは、手応え十分に直線へ向くと、上がり32.9秒の脚を繰り出し、これまた0.4秒差の圧勝でした。上がり2位のアサヒが使った上がりタイムが33.5秒ですから、まさに異次元の切れ味です。東京スポーツ杯2歳Sといえば、直近10年でディープブリランテ、ワグネリアン、コントレイルと3頭がダービー馬に輝いた出世レース。この馬の将来も約束されたようなものでしょう。  この馬の通ぶりポイントは「キタサンブラック」。同馬の父キタサンブラックは、2015年から2017年の間にG1を7勝した歴史的名馬です。その実積もさることながら、実質上のオーナーが北島三郎さんであることでも知られており、G1勝利後に競馬場に響きわたる『まつり』は、平成の競馬史に残る名シーンの1つでした。  キタサンブラックは、この世代が初年度産駒。キタサンブラック自身が突然変異的な名馬だったせいもあってか、同馬の種牡馬としての能力を疑問視する声も一部にありましたが、そんな雑音を黙らせたのがイクイノックスの登場でした。この馬の活躍次第では、一気に「ポストディープ」の筆頭候補に躍り出る可能性も秘めています。  この3強に続くのが、朝日杯フューチュリティS敗退組。2着のセリフォスは既に重賞2勝を挙げており、3着のダノンスコーピオンは萩Sでキラーアビリティを破っています。荒削りな競馬で5着止まりだったジオクリフも巻き返しの余地はあるでしょう。
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牝馬の注目馬はいかに
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馬券攻略誌『競馬王』の元編集長。現在はフリーの編集者・ライターとして「競馬を一生楽しむ」ためのコンテンツ作りに勤しんでいる。
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