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「日本のコロナ水際対策は甘い」と叩く人たちの誤解。元空港検疫所長が明かす

水際対策の目的は「時間稼ぎ」

――水際に「鉄壁」を求めるがゆえに、批判や不満につながったのかもしれません。
成田空港検疫所のHP

成田空港検疫所のサイト

田中:それも、大きな誤解なんです。水際の目的は感染症の侵入を100%阻止することではありません。もちろん、現場はそのつもりで業務に当たっています。が、現実問題として検疫で完全にウイルスの侵入を止めることは人力ではなく科学の限界があり不可能です。 水際で感染症の侵入を可能な限り防ぎ、その間に医療機関や保健所などの体制を整える。流行のピークを遅らせる。「時間稼ぎ」が水際対策の目的なんです。その認識が共有されていなかったのも大きいかもしれません。

空港検疫での検査に、いまも批判が続くが…

――その他、気になった“誤解“による批判はありましたか? 田中:やはり、検疫での検査についてです。2020年7月から、空港での検査をPCR検査から抗原定量検査へと変更しました。これについては、いまだに、「空港検疫では精度の低い抗原検査を行なっている」という言説が根強く残っていて、非常に残念に思っています。 ――改めて、抗原検査について説明していただけますか? 田中:「抗原検査」は体の中にある抗原――ウイルスや細菌に含まれる特異的なタンパク質を検出するもので、抗原定性検査と抗原定量検査があります。簡易スティックを用いて、抗原の有無を見る抗原定性検査の精度は確かに低い。しかし、空港検疫で行なっているのは抗原定量検査。こちらはPCR検査とほぼ同じ結果が得られるとして国の認可を受けています。定量検査と定性検査を混同している人は少なくないようです。
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なぜPCR検査でなく抗原検査をするのか
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元厚生労働省成田空港検疫所長。静岡市保健所長(2021年10月より)。 1987年、山口大学医学部卒業。1991年、山口大学大学院医学研究科修了、医学博士。山口大学医学部助手、厚生省健康政策局医事課試験免許室試験専門官などを経て、2007年、JAXA有人宇宙技術部宇宙医学生物学研究室主幹開発員。2010年、文部科学省研究振興局ライフサイエンス課ゲノム研究企画調整官。2011年、内閣府参事官(ライフイノベーション担当)。2012年、厚生労働省神戸検疫所長。以降、同・東京検疫所長、同・北海道厚生局長を経て、2018年、同・成田空港検疫所長就任。著書に『子供に教えるためのプログラミング入門』、『算数でわかるPythonプログラミング』、『成田空港検疫で何が起きていたのか ─新型コロナ水際対策の功罪』がある。

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