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「日本のコロナ水際対策は甘い」と叩く人たちの誤解。元空港検疫所長が明かす

なぜPCR検査でなく抗原検査をするのか

――一言で「抗原検査」といっても別モノなのですね。 田中:ウイルスや細菌に含まれる特異的なタンパク質の反応――抗原抗体反応を使っているという点において共通しますが、両者が同じというのは、「車輪が付いてれば三輪車も新幹線も同じ」というようなものです。 加えて、空港検疫では偽陰性を見逃さないよう、抗原定量検査に加え必要に応じてPCR検査での再検査も行っています。批判する方はこの二重体制については言及しないんです。 ――そもそもなぜ、抗原定量検査を導入したのでしょうか。 田中:一つは空港の混雑解消です。その頃はまだPCR検査の結果を出すのに6時間は必要で、かつ、PCR検査は検体がある程度まとまらないと検査にかけられず、不定期に検体が出てくるので効率化が難しい。結果、空港に人が滞留してしまう。抗原定量検査は検体一件ごとに検査ができ、30分で結果が出せます。また、唾液を検体として使えるのもメリットでした。 ――なるほど。

実は、PCRによる再検査もやっている

田中:人をなるべく早く流すため、抗原定量検査とPCRによる再検査を導入しつつ、結果をすぐに出す必要がなく検体をまとめて集められる待機施設にいる人には、PCR検査を行なっています。現場の状況を踏まえて、総合的に最良の方法を選択している。 逆にいえば、PCR検査だって万能ではなく、精度管理がされていなければ、決して信用できるものではありません。最近、英国ではPCRをすり抜けるスティルス・オミクロンが話題になっていてPCRも万能ではありません。 ――検査の精度管理とはどういうことでしょうか? 田中:簡単にいうと、同じ検体を検査したときに、同じ結果が出るということです。PCR検査でも試薬の温度管理や処理の仕方が違えば、結果が同じになるとは限りません。条件が一定でなければ、その検査結果の正確性は保証されないのです。
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検疫所で確認される陽性者が急増している
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元厚生労働省成田空港検疫所長。静岡市保健所長(2021年10月より)。 1987年、山口大学医学部卒業。1991年、山口大学大学院医学研究科修了、医学博士。山口大学医学部助手、厚生省健康政策局医事課試験免許室試験専門官などを経て、2007年、JAXA有人宇宙技術部宇宙医学生物学研究室主幹開発員。2010年、文部科学省研究振興局ライフサイエンス課ゲノム研究企画調整官。2011年、内閣府参事官(ライフイノベーション担当)。2012年、厚生労働省神戸検疫所長。以降、同・東京検疫所長、同・北海道厚生局長を経て、2018年、同・成田空港検疫所長就任。著書に『子供に教えるためのプログラミング入門』、『算数でわかるPythonプログラミング』、『成田空港検疫で何が起きていたのか ─新型コロナ水際対策の功罪』がある。

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