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創作あーちすと・のんがコロナ禍で実感したこと「『表現すること』ができないとダメ」

カットを自分でかけるときは小さな声で

のん――初監督作である『おちをつけなんせ』から監督として進化した部分はありますか。  対策を立てました。言葉で伝えるのがちょっと苦手なので、イメージボードをつくったり、写真の資料を集めたりして「こういうトーンの映像にしたい」とか「リボンをこんなふうに出現させたい」とかいうのを、絵に実際に貼り付けたりして説明しました。  脚本の文章だけだとリボンがどれくらいのファンタジー度合いででてくるのが全然伝わらないみたいで、みんな戸惑っていて(笑)。リボンの色合いにしても、淡い感じでとか、私が演じた主人公のいつかの部屋のなかは寒色の青系でとか。想像以上の仕上がりになったのは特撮を担当していただいた樋口真嗣監督と尾上克郎監督、おふたりのおかげです。 ――現場では監督として「カット!」って言うんですか?  言います(笑)。自分が演じてるときはスタートをかけてもらって、カットは自分でかけてました。シーンによりますけど、自分が怒ったり泣いたりしてるシーンでカットをかけるときは、さすがにちょっと照れくさくて。「自作自演じゃん!」みたいな気持ちになって、小さい声で「……カット」みたいな(笑)。

「監督」から「役」に切り替える難しさ

――俳優として、監督として、作品への向き合い方はそれぞれ異なりますか。  違いますね。自分で脚本を書いているので、一番、いつかのことをわかっているつもりなんですけど、監督目線として「こういう画が欲しい」って思ってしまうと、背景とかサブテキストとか捉えきれてない部分がでてきてしまうんです。演じるときは一度、自分の頭のなかでまっさらにして役を構築してから臨むようにしてました。  だから現場が一番難しかったですね。監督としての脳みそを使ってると役に集中できないというか。すごいアドレナリンがでるんです、監督をやってるときって。眠くならないんですよ。みんな疲れるてるけど、私ぜんぜん疲れてない! みたいな(笑)。でも、役として演技をするときはその興奮を落ち着けて役のモチベーションに設定し直さないといけなくて。 ――撮影時間も限られるなか、かなり難しい作業ですね。 私は、のんになってからアクティングコーチをつけているんです。ウイル・スミスさんやジェニファー・ロペスさんのアクティングコーチをされている方のワークショップに参加したことがありますが、とても勉強になりました。  ハリウッドでは演技に対する考え方がすごくシステマティックで、基礎みたいなことが観念的ではなくてちゃんとあって。それがすごく自分に合っているんです。監督から役に切り替えたとき、うまく集中できてないとコーチから指摘してもらいながら、気持ちを整えて撮影に臨むことができました。
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コロナ禍で自分の「好き」を切実に再確認しました
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株式会社ラーニャ代表取締役。ドラマや映画の執筆を行うライター。Twitter⇒@Yuichitter

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