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ブラジルに「枠内シュートが0本」の日本代表。森保監督でW杯を戦えるのか

チュニジア戦の3失点とは何だったのか

実は“日本キラー”のネイマール。過去4試合で8ゴールも決められていた

 ブラジル戦である程度の成果を見せた日本代表の守備だが、4試合目となったチュニジア戦では3失点を喫している。ただ、この失点に関しては守備以前にコンディション調整と連係に大きな要因があった。試合間が中3日というワールドカップ本大会と同じスケジュールで行われた今回の試合だったが、全試合でスタメン出場を果たした吉田麻也と遠藤航のパフォーマンスが4試合目のチュニジア戦で明らかに落ちていた。また、チュニジアにはパフォーマンスが落ちた2人のところをうまく狙われてしまっていた。さらに、これまで出場の少なかったシュミット・ダニエルがGKを務めたことでディフェンスラインに入った選手らとの連係に欠ける場面があり失点につながった。  前者に関しては、さらにプレー強度が高まる本大会に向けて不安材料に感じられるが、今回の出来事を踏まえたコンディション調整を行うとともにプレー時間の調整も考慮すれば本大会までに解決できる問題だろう。後者の連係に関しても、残された時間は少ないとはいえ、選手間の密なコミュニケーションによって解決されることだろう。  そういった考察を踏まえると、現時点ではドイツ、スペインといった強豪を相手にも守備面では成果を出せると感じている人が多いだろう。

攻撃面では不安要素だらけ

ガーナ戦でそれぞれ代表初ゴールを決めた久保と前田

 一方の攻撃面では、久保建英や前田大然が代表初ゴールを挙げるなどポジティブな話題を提供するシリーズにはなったが、ブラジル戦では得点の可能性を感じる場面が皆無だったり、チュニジア戦ではチャンスを決めきれずに相手に試合の流れを渡してしまったりと、本番に向けて不安を覚える4試合になった。  特に、ブラジル戦では日本代表のストロングとして考えられている伊東純也や三苫薫が1対1で勝てる場面すらなく、これまで想定していた戦い方を大きく考え直さなければならない内容になった。そのブラジル戦にインサイドハーフで出場した原口元気は、「間違いなく彼らの能力はスペシャルだし、僕らの武器ではあるのですけど、ブラジル戦を見てもらったとおり彼らでもなかなか剥がせないというのが多かったと思う。もちろん、シンプルに使って彼らに仕掛けさせるシーンもあるといいと思うのですけど、それだけではない、それだけではダメだなっていうのは、誰もが痛感したと思う」と主張。攻撃における速攻と遅攻の判断、それぞれのバリエーションの増加が本大会までに必要と訴えている。  また、チュニジア戦で先制点を許した直後に交代出場した三苫薫は、その試合で得点できなかったことに対して、「シンプルに最後の質と、もう少し人数をうまくかけながらゆっくり攻めることが必要だったかなと思います」と、攻撃面の連係不足を指摘し、チームとしての決め事が必要と提言した。  伊東純也のスピードや三苫薫のドリブルは、今の日本代表にとって突出した能力となっており、それを軸に戦い方や攻撃の方法を考えるべきである。ただ、彼らはリオネル・メッシやネイマールなどのワールドクラスではない。しかも、そのワールドクラスのネイマールでさえ、人数をかけたグループでの守備は容易に突破できないことはブラジル戦の日本代表の守備で成果を挙げている。伊東や三苫が勝てる確率を上げるためには、周囲の選手のサポートが必要になる。彼らの使いたいスペースを作る動き、相手にとってより危険な位置でパスを受けようとする動き、チームとしてより多くのパスコースをつくる動きなど、そういった周囲の選手のオフ・ザ・ボールの動きがあれば、相手は考慮すべき要素が増えてプレーに惑いを生じさせる。チームとして、彼らを生かすために動く献身性が求められている。  その他にも、自分たちでボールを保持できる時間をできるだけ増やす遅攻についても選手たちは指摘している。だが、相手のハイプレス下において、その精度が明らかに落ちることが今回の4試合でわかったことのひとつである。疲労や失点のリスクを考えれば、できるだけボールを保持したいと思うのは選手の真理だろう。しかし、それがうまくいかずにピンチにつながるようであれば、勝つためにはどこかのタイミングであきらめることも必要になる。速攻であろうと遅攻であろうとシュートで終われるように最後まで攻めきれれば問題はないが、その途中で奪われれば一転ピンチを招いてしまう。これについても周囲がより多くのパスコースを素早くつくることで解決できるが、本大会までの期間を考えればチームとしてボールをつなぐことをあきらめる決まり事をつくっておき、リスクを可能なかぎり回避すべきだろう。
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選手層の厚さが光明に
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スポーツライター。日本最大級だったサッカーの有料メディアを有するIT企業で、コンテンツ制作を行いスポーツ業界と関わり始める。そのなかで有名海外クラブとのビジネス立ち上げなどに関わる。その後サッカー専門誌「ストライカーDX」編集部を経て、独立。現在はサッカーを中心にスポーツコンテンツ制作に携わる
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