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『相棒』水谷・寺脇コンビの“濃すぎる”歴史。初共演も刑事ドラマだった

かつて自身が演じた役柄を見守っているようにも見える

 理性的で成熟した新キャラクター・杉下右京のそばで、熱血漢でお調子者の本城慎太郎を受け継ぐ亀山薫が躍動する。そんな亀山をいさめつつ、ときには彼の斬新な発想から力を借りる杉下の姿は、かつて自身が演じた役柄を見守っているようにも見えました。俳優と役柄の成長が、見事に反映されていたのですね。  こうして、ドラマは変わっても途絶えることのなかった両者の関係が『相棒』人気の基礎を作ったと言えるのでしょう。  今回の復帰にあたり、水谷のことを「役者人生の師匠と言っても過言ではない」と語った寺脇の言葉通り、『相棒』はこの二人でなければ生まれなかったのです。  もっとも、二人の間にはたびたび不仲説が飛び交ってきました。役作りに熱心な寺脇と制作スタッフとの間で衝突があり、次第に水谷とも疎遠になっていったとの報道もありました。  けれども、そうした諸々を含めて、ただ芝居がいいとか脚本や演出が巧妙だとかでは説明できない濃密な空気が『相棒』にはある。30年に渡る歴史の重みこそが、多くの視聴者の心を揺さぶる最大の要因なのだと思います。

『相棒』終了説の真相やいかに

 同時に、寺脇復帰の裏で『相棒』終了説もささやかれています。70歳を迎える水谷の体力的な問題や莫大な制作費の問題等が理由にあげられています。真相はさておき、寺脇復帰のインパクトを超えるトピックが想像できない以上、次のシーズンで終了と見るのが妥当でしょう。  それは以前からうかがえます。今年3月放送のseason20第17話で米沢守(六角精児)が久々に登場、そして亀山薫のカムバック。懐かしいキャラクターを動員して、ドラマ全体を振り返るような流れが見て取れるのですね。    同じようなケースで思い出すのが、アメリカの大人気ドラマ『NCIS』です。2003年の放送開始から、18年に渡りシリーズの顔、リロイ・ジェスロ・ギブスを演じてきたマーク・ハーモンがシーズン19をもって卒業しました。(註・ドラマは後任にゲイリー・コール(オールデン・パーカー捜査官役)を据えて継続中)  それまでの間、劇中でギブスが捜査官からの引退を匂わせるセリフを語ったり、名物キャラだったジヴァ・ダヴィード(コート・デ・パブロ)が6年ぶりに復帰したりといったことがありました。さらにギブスの最後のエピソードでは、ハーモンの妻であるパム・ドーバーと共演。  懐かしいキャラクターとの再会を経て、最も信頼のおけるパートナーとの仕事を最後に、マーク・ハーモンはリロイ・ジェスロ・ギブスのストーリーにピリオドを打ったのです。
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音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4

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