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町田啓太主演『テッパチ』にみる、自衛隊ドラマが“タブー”でなくなった理由

自衛隊はタブーではなくなった

 2004年4月、NHK-Eテレはドラマ『中学生日記 ピース!~ぼくたちの戦争と平和~』を放送した。それまでドラマに出演していた中学生役の1人が現実に少年工科学校に進むことになったため、中学生たちが平和や自衛隊の存在について考える構成にした。  少年工科学校に進む生徒が「家族や友達を守る仕事がしたい」と訴える一方、自衛隊を否定する女子生徒の意見も採り上げられた。さまざまな声が紹介された。自衛隊がタブー扱いされていた1970年代までとは様変わりした。  主人公(矢田亜希子)の父親(長塚京三)が海上自衛隊の広報室に勤務していたのが2005年のTBS『夢で逢いましょう』。現場に立つ自衛官ではなかったものの、ごく当たり前のように自衛官がドラマに登場し始めた。2013年につくられた同じTBSの『空飛ぶ広報室』は舞台が航空自衛隊広報室。自衛隊が物語の中心に据えられた。  この間の2011年には東日本大震災が起き、計約1074万人の自衛隊員が動員された。原発災害の収束にも当たった。世論は劇的に変化した。  2021年のTBS『リコカツ』は主人公の編集者(北川景子)の夫(永山瑛太)が航空自衛隊の航空救難団員というラブコメディだった。自衛隊員が初めてラブコメの準主人公に躍り出た。  漫画界ではダメな若手自衛官を主人公とするお笑い作品『右向け左!』が1989年に大ヒットし、自衛隊はジャンルの1つとして完全に確立している。『テッパチ!』もヒットし、ドラマの領域を広げるか。<文/高堀冬彦>
放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員
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