ガレキ処理より必要なこと(5)

新聞やテレビの報道では「ガレキ処理をしなければ震災復興は始まらない」という印象を受けるが、本当にそうなのだろうか? マスコミが語らない「ガレキ処理」の実態をリポート!

◆ガレキは資源。燃やさず堤防など地元で有効利用を

宮脇 昭氏

宮脇 昭氏

 ガレキはゴミではありません。貴重な地球資源です。今の報道を見ていると「ガレキは焼いて処理しなければならない」というように思えますが、それはムダの極みです。燃料を使って被災地外までガレキを運び、燃料を使って焼却する。当然、二酸化炭素も有害物質もたくさん出ます。こんなことを、莫大なお金を使ってやる必要はまったくありません。ガレキは焼かずに、資源として有効利用すればいいのです。第二次世界大戦後のドイツでは、戦災ガレキを使って各地に都市林を造成しました。’72年のミュンヘン・オリンピックの会場もその一つです。 

 ガレキを土と混ぜた通気性のよいマウンド(土塁)は、緑地づくりにとって最高の土壌になります。そこに土地本来の樹木を植えれば、地中深く張った根がガレキを抱き込んで強固な森ができる。生態系も豊かになります。ドイツなどでは、植物性ガレキを焼いたり捨てたりせずに緑地づくりに活用するよう条例で定められています。

森林公園

第二次世界大戦で大量のガレキが生まれたドイツ・ベルリンでは、ガレキの山が現在は森林公園となっている

 震災では、津波が巨大な防潮堤を越え、または破壊して内陸部に流れ込みました。コンクリートの防潮堤に津波が当たると、衝撃のエネルギーが倍増してしまうのです。一方、タブノキやシラカシなどの樹木が生えた沿岸の森は、あまり津波の被害を受けませんでした。樹林には津波エネルギーを和らげる「波砕効果」があるからです。森が津波の衝撃を吸収しているうちに逃げる時間を稼ぐことができますし、引き波に対してはフェンスの役割を果たしますから、人が海に流されるのを防ぎます。もしこのような防潮林があれば、2万人もの命を失わずに済んだかもしれません。

常緑高木のタブノキ

大津波でも流されなかった常緑高木のタブノキ

 私は、三陸海岸沿いに南北300kmの「森の長城」を築くことを提案しています。震災ガレキと土を混ぜ込んで幅100m高さ10~20mの堤を造り、そこにその土地本来の樹木を植えれば、十数年後には高さ40~50mの「緑の防波堤」ができあがります。必要な木は約9000万本ですが、苗を買って育ててくれるボランティアを世界中で募集し、東北に植えに来てもらえば大きな観光資源になるでしょう。また成長した老大木を慎重に利用すれば、非常に価値の高い家具や建築の材料となり地域経済に貢献します。一本当たりの苗を300円と見積もっても、かかる費用は270億円程度。何千億円もの税金を使い、膨大な二酸化炭素を出しながらガレキを焼いてしまうのは、最低の下策なのです。

【宮脇 昭氏】
生態学者。国際生態学センター長、横浜国立大学名誉教授。著書に『瓦礫を生かす「森の防波堤」が命を守る』(学研)など。『「森の長城」が日本を救う』(河出書房新社)を3月26日に上梓

取材・文・撮影/新井 哉 尾原宏之 写真/宮脇 昭 権徹

― ガレキ処理より必要なこと【5】 ―

「森の長城」が日本を救う

森が津波被害から守ってくれる




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