ガレキ処理より必要なこと(3)
新聞やテレビの報道では「ガレキ処理をしなければ震災復興は始まらない」という印象を受けるが、本当にそうなのだろうか? マスコミが語らない「ガレキ処理」の実態をリポート!
◆「ガレキ受け入れ」の実態は震災復興利権の奪い合い
「石原都知事とガレキ処理を請け負うゼネコンとの利権疑惑は本当か」「天下り団体や東電役員が東京都の災害廃棄物の処理に加わっている」。東京都と東京二十三区清掃一部事務組合などが主催する災害廃棄物広域処理の説明会で、住民側からガレキ利権を追及する声が相次いだ。説明会に参加した住民は「利権疑惑の質問にまったく答えていない」「行政側は、はぐらかしてばかり」と怒りが収まらない様子。
「東北の被災地を助けるために協力してほしい」と、野田首相や細野環境相らが全国の自治体にガレキ処理の協力を呼びかけているが、いまだに難色を示す自治体が多い。その背景には、放射性物質への懸念のほかに、こうした災害廃棄物をめぐる利権疑惑への不信感があるのは間違いないだろう。
東京都の災害廃棄物の処理スキームや、これまでの報道を分析すると、「石原都知事―鹿島建設」「鹿島建設―女川町」「女川町―東北電力」「東北電力―鹿島建設」の四つの「利権の絆」が浮かび上がってくる。石原知事はガレキ受け入れで相次ぐ苦情に「黙れ」と一喝したが、自身の利権疑惑がネットや週刊誌で報じられてからは、釈明もせずに「被災地の懸命な努力をよそに、政府は致命的にスピード感を欠いている」と国に責任を転嫁する始末。
◆東京都の焼却事業に「復興利権」の疑惑
かつて石原知事の第1秘書を務めた栗原俊記氏は、現在は鹿島建設の執行役員。「石原知事と鹿島で何らかの裏取引があったのでは?」との噂が広がり、石原知事のリコールを求める声も出てきている。
また、東京電力と東北電力は事実上の兄弟会社。鹿島建設は女川原発1~3号機の建屋などを建設。女川町の総合運動場や野球場など市民向けのハコモノ建築物を受注しているのが鹿島だ。仙台市にある東北電力本店ビルは鹿島が請け負った。鹿島は、女川原発や東北電力関連で莫大な利益を得ていたことになる。同社のホームページでも「特別寄稿」と銘打って女川町を大々的にPRし、「絆」の維持に懸命だ。
利権の疑いを招く元凶は、東京都が作った災害廃棄物処理スキームにある。ガレキ処理費として最初の1年で約70億円、3年間で約280億円の運転資金を東京都が貸し付ける「東京都環境整備公社」の理事長は元東京都環境局次長。評議員には東京電力の執行役員や東京都産業廃棄物協会長らが名を連ねる。さらに、東京電力グループの「東京臨界リサイクルパワー」が可燃性ガレキの焼却事業を請け負っている。
「天下り団体理事長」「東電役員」「産廃業の重鎮」――これだけ役者がそろえば、「利権はまったくない」と釈明するのには無理がある。こうした事実に、住民の疑いの目が向くのは当然だ。
利権の意図がなかったにしても、災害廃棄物のスムーズな処理を考えた場合、疑惑を招きかねない工程を作ることは、絶対に避けなければならなかったはずだ。利権の疑いを招く工程を作った東京都庁の役人は、第一級の「戦犯」といえるだろう。ガレキ受け入れに自治体が熱心なのは、「被災地支援」よりも「復興利権」が目的といえるのではないだろうか。
⇒ガレキ処理より必要なこと(4)へ続く
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