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藤井聡太の将棋には「華がある」。負け戦でも見せ場を作れるワケ

史上最年少(14歳2か月)でプロ入り後、デビュー以来負けなしの29連勝──彗星のごとく将棋界に現れてから6年。現在、竜王、王位、王将、棋聖、叡王と5つのタイトルを持つ藤井聡太竜王の強さの源とは?アマチュア2人がプロ棋士になんでも聞きまくる新刊『あの棋士はどれだけすごいの?会議』の著者である棋士の高野秀行六段、ライターの岡部敬史さん、漫画家のさくらはな。さんの3人に、現在、八冠ロードを爆進中の藤井五冠のすごさについて語り合ってもらった。

藤井聡太はどれだけすごい!?

藤井聡太岡部敬史(以下、岡部):ズバリ、藤井聡太五冠の強さの要因は、どんなところにあると思いますか? 高野秀行(以下、高野):よくAIの力が大きいと言われますが、もともと持っている詰将棋の力など、下地の力が、ものすごく大きいと思います。 さくらはな。(以下、さくら):決してAIだけではないと。 高野:「AIがあったから勝っている」といった論調もたまに見かけますが、それはまったくの見当違い。AIがなくても彼は勝ちます。彼の強さの一つを言うと自分で考えることが苦にならないという点です。 さくら:普通の棋士の人は、考えると疲れますか? 高野:疲れるでしょう(笑)。 さくら:でも藤井聡太さんは、どこか楽しそう。 高野:永瀬さん(永瀬拓矢王座)も楽しそうでしょう。私、最近「人間の部」ということばをよく使うんですが、AIと違って人間の部の人は疲れます(笑)。彼らも疲れるはずだけど、とても楽しそう。これは羽生世代にもいえることで、ちょっと別次元なんですよね。

「終盤力」の源は詰将棋?

さくら:藤井さんの強さというと「終盤力」が挙げられます。 高野:先ほど「下地の力」と言いましたが、その源が「詰将棋」。長い手順の詰将棋を解いてきた人というのは、実戦でも長い手順で考えることを苦にしないんですね。途中で読みをはしょったりしない。ただこれは最後まで読まないと指せなかったりして、時間に制限のある“勝負”という面では不利に働くケースもあります。 さくら:藤井聡太さんって、詰将棋を解くときに盤面をイメージしないんですよね。あれはどういうことなんですか? 高野:彼が子どもの頃に通っていた教室では、盤面や紙を見ないで符号だけ言ってそれを解いていたんですね。その影響なのでしょう。ただあれは普通の教室ではなかなか難しいと思いますよ。というのは、口で言っただけで盤面を思い描いて解ける子ってすごく少ないですからね。 岡部:確かに(笑)。 高野:ただそのことが、今の力にどのように作用したのかはよくわかりません。彼自身も説明できないのではないでしょうか。「みんなは違うのかな?」と思っているかもしれません(笑)。 岡部:では、考えるのを苦にしないこと。そして詰将棋の力が強さの要因としてあると。 高野:そうですね。あと強くなる過程を見ていると、何か失敗したとき、それを修正するのがとても上手なんじゃないかなと感じます。
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藤井聡太の将棋は「全員攻撃、全員守り」
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あの棋士はどれだけすごいの?会議

気になるギモンにプロ棋士が明朗回答

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