更新日:2022年08月19日 11:27
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『ちむどんどん』に沖縄の人が怒ってる? 批難される理由と本当の評価

ドラマの評判を自治体に尋ねてみた

『ちむどんどん』の沖縄の部分の舞台になっているのは山原村だが、これは架空の村なので、まず同じ山原地区の恩納村役場の広報に尋ねた。 「『ちむどんどん』に怒っている人ですか? 聞いたことがないですねぇ……」  こちらの質問が思いも寄らないものだったらしく、驚かれてしまった。  同じ山原地区の金武町役場にも聞かせてもらった。こちらは電話を担当者に取り次いでくれた総務課職員に取材主旨を伝えた途端、ぷっと吹かれてしまった。あり得ない話と思ったらしい。その後、質問に答えてくれた観光課職員はこう即答した。 「私のところには怒っているという声は上がってきていませんけどねぇ」  確認しないで判断する訳にはいかなかったが、そりゃそうだよなぁ。所詮、フィクションなんだから。例えイラつく場面があろうが、沖縄の人が目くじら立てることはないだろう。  映画『翔んで埼玉』(2019年)で埼玉県人が怒ったなんて話は聞いた試しがない。群馬県人を揶揄した2017年のドラマ『お前はまだグンマを知らない』(日本テレビ)を見た群馬県人の親族はゲラゲラ笑い転げていた。まぁ、そんなもんだろう。

当時の暮らしぶりはリアルに再現

 沖縄の2つの県紙「琉球新報」と「沖縄タイムス」も4月11日の放送開始前から現在まで『ちむどんどん』を全力で応援している。もちろん両紙とNHKは全く無縁の組織だが、連日のように関連記事を載せ続けている。全記事に目を通したが、批判や苦言は一切ない。  地元を舞台にしたドラマである上、糸満市出身の黒島結菜(25)や浦添市出身の仲間由紀恵(42)ら県人が多く出演している朝ドラだから、後押しするのは当然だろう。7月26日付の沖縄タイムスにはこんな記事が載った。 「『ちむどんどん』の熱心な視聴者という(糸満市の)當銘真栄市長。黒島さんは娘の高校時代の先輩で、市長の母の旧姓は黒島と『何かの縁でつながっているのかな』と話すほどだ。以前から知っているだけに『ヒロイン抜てきは本当にうれしい。出身の糸満もアピールしてほしい』と喜ぶ」(沖縄タイムス)  地元の思いを象徴する記事だろう。 『ちむどんどん』は賢秀が懲りずに繰り返し騙されるなど、リアリティーに欠ける部分が少なくない。「ありえねぇだろ」と言いたくなる場面がたびたび。これもイラッとする理由の1つだ。半面、1972年に本土復帰する前の比嘉一家の暮らしはリアルなのだという。 「もうまさにあのドラマの感じですよ。(山原地区のある北部は沖縄市、宜野湾 市、糸満市などの)中南部とは違って田舎でしたからね。返還前はいわゆる”アメリカ世”の時代で、沖縄もアメリカの影響を多く受けていましたが、北部はその影響は少なかったですね。基本的には自給自足の生活でした。豚を飼って正月とお盆にはそれをつぶして食べる」(北部観光協会などで構成する「やんばるチームどんどん協議会」会長・當山清博さん、沖縄観光情報WEBサイトより)
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放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員

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