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「息する回数を減らせば?」ワンオクTakaの“煽り”に批判殺到。透けて見える自己保身

どのような考えを持つかは自由だが…


 もちろん、新型コロナについてどのような考えを持つかは自由です。でもそれは全て個人の思想や哲学の範囲内で処理されるべき事柄なのでしょう。  たとえばエリック・クラプトンは陰謀論に片足を突っ込みつつ、反ワクチンの映画監督とコラボしたり、自身のコンサートには接種証明を要求しないと公言するなどして姿勢を明確に示しています。  なによりもミュージシャン、ソングライターとしてそれらの考えを曲で表現しました。コロナ初年度には同じ思想を持つ北アイルランドのシンガーソングライター、ヴァン・モリソンと共作でイギリスの強硬なロックダウン政策にNOを示す「Stand and Deliver」と「This Has Gotta Stop」を発表しました。  今年に入ってからは一連の政策を主導したボリス・ジョンソン首相を痛烈に批判した「Pompous Fool」をリリース。ジョンソン氏が辞任を発表した日に配信する徹底ぶりです。  異論反論はあるでしょう。クラプトン自身も一連の発言によって“何人か友達を失った”とまで話しています。

ファンを盾に快適な場所を確保しようとする「甘さ」

 でもクラプトンは全て自らの意思と責任によって事を処理しています。接種証明はいらないけれども、ワクチンを打つなとまでは言わない。マスクをしろとも外せとも言わない。静かに聴いても歓声をあげてもどちらでもかまわない。  それに比べるとTakaの言動が他者を巻き込むことを前提にしていることがよくわかるはずです。  6月23日のインスタライブでの発言以降、ミュージシャンならではの表現や作品で新型コロナや政策、社会の風潮に一石を投じるアクションは一切ありません。  全ては自分の意見をフォローしてくれる人たちの行動にかかっている。自分が社会に訴えかけるのではなく、言うことを聞く“信徒”の数によって目にもの見せてやろうという態度。    皮肉な言い方をすれば、ファンを盾に使って快適な場所を確保しているようにさえ見える。  Takaの発言にがっかりした人たちは、そこに彼の甘さを見たのだろうと思うのです。 文/石黒隆之
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4
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