更新日:2022年08月25日 16:27
エンタメ

7月期ドラマ“コア視聴率”BEST10。テレビ局が一喜一憂する勝ち組作品は

上位3作品、1位はTBSドラマ

番組公式ホームページより

 コア視聴率の合格水準は2%とされているようだから、それ以上の連ドラを挙げる。まず上位3作品である(ビデオリサーチ調べ、関東地区、8月15日~21日) ①TBS『ユニコーンに乗って』(火曜午後10時) コア3・3%/世帯7・5%/個人全体4・4% ②『日曜劇場 オールドルーキー』(日曜午後9時) コア3・1%/世帯9・7%/個人全体5・7% ③NHK『鎌倉殿の13人』(日曜午後8時) コア2・8%/世帯11・8%/個人全体7・1%  コア視聴率上位3作品に膝を打つ人は多いのではないか。いずれも秀作に違いない。 『ユニコーン――』は主要登場人物に50代以上がいない。西島秀俊の実年齢は51歳だが、西島が演じている準主役の小鳥智志は49歳という設定。おそらくコア層を意識したのだろう。26歳の主人公・成川佐奈に扮しているのは永野芽郁(22)。新興教育アプリ会社のCEOとして、小鳥や同年代の仲間たちと成功を目指し奮闘している。仲間、夢、恋。手垢まみれのテーマのようだが、普遍性がある。うまくつくったら、いつの時代の若い世代にも受け入れられる。 『日曜劇場 オールドルーキー』は連ドラの中で数少ないファミリー向け作品。だからコア視聴率のみならず、世帯視聴率も個人全体視聴率も高い。  振り返ると分かるが、『日曜劇場』はずっとそう。ドロドロの愛憎劇を描く作品なんてないし、主人公がワルというピカレスク作品もない。伏線だらけの難解な作品もつくらない。勧善懲悪、健全な作品ばかりである。背景にはスポンサー事情がある。この番組を提供しているのはSUNTORYとSUBARU、日本生命、花王。コア層ばかりを狙う企業ではない。連ドラが若い世代向けかどうかはスポンサーで分かる。高齢者はなかなか利用しない消費者金融や、婚活アプリ会社が提供していたら、若い世代向けと思って間違いない。 『鎌倉殿――』は若い世代にも見られている異色の大河だ。通常、大河ファンは中高年以上。たとえば昨年12月26日に放送された前作『青天を衝け』の最終回もコアは1・7%に過ぎなかった。  若者も惹き付けている理由は第一に三谷幸喜氏(61)の脚本にギャグが散りばめられているからだろう。また、歴史上は一定の意味を持つものの、物語化すると面白くなりそうにないエピソードをバッサリ斬り捨てているのも成功した。

韓流リメイクの『六本木クラス』は6位

番組公式ホームページより

 次は4位から6位。 ④TBS『石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー』(金曜午後10時) コア2・7%/世帯7・5%/個人全体4・0% ⑤日本テレビ『新・信長公記~クラスメイトは戦国武将~』(午後10時半) コア2・6%/世帯4・4%/個人全体2・6% ⑥テレビ朝日『六本木クラス』(木曜午後9時) コア2・4%/世帯9・3%/個人全体5・3% 『石子と羽男』は有村架純(29)が生真面目なパラリーガル、中村倫也(35)が軽薄な変人弁護士にそれぞれ扮しているリーガルドラマだ。  リーガルドラマは過去にも山ほどあったが、この作品の特徴の1つは扱う案件を若い世代に身近なものに絞っているところ。「カフェで携帯を充電」(窃盗罪)「スマホゲームの高額課金」(未成年者取消権)「映画の無断アップロード」(著作権法違反)――。中高年以上に向けたリーガルドラマにありがちな殺人は扱わない。 『新・信長公記』のコア視聴率の健闘は「世代によって見るドラマは全く異なる」ことを鮮明に表している。小澤征悦(48)がクローンとして蘇った高校1年生の徳川家康を演じ、濱田岳(34)も黒田官兵衛のクローンとしてやはり高1に扮している。ハチャメチャな作品だ。どう考えても無理があるし、辻褄が合わないところだらけなのだが、ブッ飛んでいて理屈抜きで笑える。堅苦しさがないから若い世代には魅力に違いない。  逆に『六本木クラス』は若い世代から中高年以上まで幅広く見られている。原作の韓国ドラマ『梨泰院クラス』が若い世代に人気だった一方、親の恨みを子が晴らすという筋書きが中高年以上にもウケているからではないか。なにしろ日本は150余年前の江戸時代まで仇討ちは正しいとされていた国なのだから。
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放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員

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