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日本馬が凱旋門賞制覇に近づいた伝説のレース3選

競馬ファンが勝利を信じて疑わなかった 06年ディープインパクト

勝SPA!

日本競馬史上、最も凱旋門賞制覇に近づいたのがオルフェーヴル。2012年、2013年と2年連続で2着だった

 エルコンドルパサーの挑戦から7年後、あのディープインパクトが凱旋門賞に参戦します。無敗の三冠馬にして、それまで11戦10勝。3200mの天皇賞(春)を超レコードで圧勝し、壮行レースとなった宝塚記念でも、雨でぬかるんだタフな馬場を物ともせず快勝。遠征に送り出す競馬ファンのムードも「(凱旋門賞を)勝てるかも」ではなく「勝てるだろう」に変わっていきました。    2006年の凱旋門賞は、ハリケーンラン、シロッコとともにディープインパクトが三強を形成。強力メンバーが揃ったことで、8頭立ての少頭数となります。  欧州調教馬しか勝っていないという事実が示す通り、凱旋門賞には厳しい「アウェーの洗礼」があります。多頭数で揉まれてしまい、馬群から抜け出せない危険がありましたが、頭数が減ったことでその心配も解消。風はディープインパクトに吹いているかのように思われました。  しかし、レースでは残り400m地点でディープインパクトが持ったままの手応えで先頭に立ったものの、そこから伸びが鈍り、レイルリンク、プライドにつぐ3着(レース後にフランス競馬における禁止薬物が検出され失格)。日本競馬の悲願は持ち越しとなりました。    実は、筆者も現地でレースを観戦していた一人。在籍していた月刊誌は月末締め切りでしたが、印刷所に無理を言って巻頭の1ページだけ締め切りを10月2日の深夜まで伸ばしてもらい、速報を挿入することになっていました。失意のまま、プレスセンターでカメラマンがディープインパクトの写真を送信している光景を眺めていましたが、あの虚無感を、今でもハッキリと覚えています。  

誰もが勝利を確信した 12年オルフェーヴル

 ディープインパクトの敗戦から6年、再び、三冠馬が凱旋門賞に挑みます。  阪神大賞典での世紀の大逸走、天皇賞(春)での惨敗から立ち直り、宝塚記念とフォワ賞を連勝したオルフェーヴルは、凱旋門賞では、同年の英愛ダービー馬キャメロットに次ぐ2番人気に支持されます。  レースは後方2番手で最後の直線を迎えると、大外から持ったままの手応えで進出。残り300m地点で内の馬群を一飲みします。リードを広げにかかった姿に、日本中の誰もが勝利を確信しました。しかし、そこから内ラチ沿いまで急激に斜行してしまい失速。鞍上のスミヨン騎手も必死に追いましたが、急追してきたソレミアがクビ差交わしたところがゴールでした。  最後の直線での盛り上がりからの落胆は、「悲哀の凱旋門賞2012」と銘打たれたYouTubeの動画をみると実感できます。まさに、これと同じ光景が、日本全国で繰り広げられていたことでしょう。この競馬をしても勝てないのか、それが全競馬ファンの思いでした。  オルフェーヴルは翌年にも凱旋門賞に挑戦しますが、トレヴに5馬身差をつけられる完敗の2着。2014年以降は、日本馬が5着にも入れない状況が続いています。 「勝てるかも」と初めて意識した1999年、「勝てるはず」と送り出した2006年、「勝った」と思った2012年。紛れもなく、日本馬が凱旋門賞制覇に限りなく近づいた瞬間でした。  今年の凱旋門賞の発走時間は日本時間で10月2日の23時5分です。 文/松山崇
馬券攻略誌『競馬王』の元編集長。現在はフリーの編集者・ライターとして「競馬を一生楽しむ」ためのコンテンツ作りに勤しんでいる。
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