ビザなし入国措置で日本人観光客急増の韓国で、古代朝鮮「加耶」王国史跡めぐりのススメ
国際企画展示「加耶-古代東アジアを生きた、ある王国の歴史-」が開催中だ。その展示代表をつとめる高田貫太・国立歴史民俗博物館教授に、古代朝鮮の「加耶」(かや)の史跡をめぐる旅のモデルコースを伺った。以下は高田氏の寄稿である。
韓国に旅行したいという人は多いだろう。日本と似ているところと違うところが混在するお隣の国。「身近に」異文化を体感できるところが、韓国旅行の魅力のひとつだ。
加耶とは、3~6世紀(日本の古墳時代と同じころ)に朝鮮半島南部に存在し、たがいに協力し、時には競い合いながら活躍した王国群である。日本(倭)とも、経済的・文化的交流がさかんに行われていたことがわかっている。この加耶の史跡、特に王や有力者が眠る古墳が、韓国南部には今でもたくさん残っている。その代表的なものを巡るコースプランと、史跡の概要を紹介したい。
【1日目】金海(鳳凰洞遺跡、大成洞古墳群、国立金海博物館、盆山城)
旅の始まりは金海国際空港(釜山市)。日本からは、成田、関西、福岡、中部、新千歳空港から直行便が出ている。空港に着くと、無人運行の軽電鉄に乗って30分弱で鳳凰駅に到着する。その東側に、きれいに整備された鳳凰洞遺跡が広がる。小高い丘陵とその周りが遺跡で、調査で確認された建物が復元されている。ここは加耶の中で最初に勢力を誇った「金官加耶」(きんかんかや)の王宮だと考えられている。
軽電鉄に乗っている間、窓の外には平野が広がっているが、ここはかつて大きな内湾だった。金官加耶は、この湾を国際的な貿易の港として整備して、さまざまな社会と交易した。鳳凰洞遺跡にも港が備わっていたようで、船の部材が出土している。実はこの船、部材の樹種から見ると倭でつくられた可能性が高い。金官加耶との交易のため、倭からも人々がやってきていたのだろう。
鳳凰洞遺跡から北へ「加耶の道(가야의 길)」という遊歩道を歩く。すると、10分ほどで大成洞古墳群に着く。金官加耶の王や王族、貴族が葬られた墓地である。独立した丘陵に連綿とお墓をつくりつづけていて、まるで丘陵全体がひとつのモニュメントのようだ。古墳群のすぐ横にある大成洞古墳博物館では、お墓の構造、さまざまな副葬品、金官加耶の歴史などをビジュアルで展示している。
大成洞古墳群からさらに「加耶の道」を北へ15分ほど歩くと、国立金海博物館に到着する。小腹がすいた時には、周りには飲食店があまりないので、軽電鉄の高架をはさんで向かい側のショッピングセンタ―「homeplus」のフードコートがおすすめだ。
国立金海博物館は、加耶の歴史と文化を紹介することを目的とした、唯一の総合博物館である。なによりも展示資料の数と質に圧倒されるし、日本語の図録やガイドレシーバーも準備されている。じっくりと見学したい。
初日はここで終了……と思ったが、特に「金官加耶の故地を一望したい」という方に盆山城を紹介する。「加耶の道」を歩いている途中に東を眺めると、復元された城壁がめぐる山が遠くに確認できるはずだ。これが盆山城だ。この頂きからは、初日にまわった金官加耶の王宮や王陵群、かつての内湾を見通すことができる。まさに絶景スポットである。
タクシーで山の東北側から中腹へ至る道を登り、下車してさらに15分ほどの徒歩となる。タクシーの運転手さんはおそらく道を知らないので、地図を使いながらの説明が必要となる。国立金海博物館から頂きにたどり着くまで、途中で迷わなければ1時間ほどだ。
韓国を訪れた8月の日本人観光客の数は2万6482人で、昨年同月の11.73倍と大幅に増加したという。これは、韓国が日本人のビザなし入国を認める措置を8月から始めたことが大きな要因とみられている(10月31日まで)。
さらに韓国政府は、入国者への新型コロナ陰性証明書の提出を9月3日から不要としていて、10月1日からは入国後にPCR検査を受ける義務もなくなった。
10月4日から、国立歴史民俗博物館(千葉県佐倉市)で
釜山市の金海国際空港から「金官加耶」の王宮跡へ
質量ともに充実した金海博物館をじっくりと見学
【国際企画展示「加耶―古代東アジアを生きた、ある王国の歴史―」】
開催期間:2022年10月4日(火)~12月11日(日)
会場:国立歴史民俗博物館 企画展示室A
料金:一般1000円/大学生500円
※高校生以下は入館料無料
開館時間:9時30分~16時30分(入館は16時00分まで)
休館日:毎週月曜日(月曜日が休日の場合は開館し、翌日休館)
開催期間:2022年10月4日(火)~12月11日(日)
会場:国立歴史民俗博物館 企画展示室A
料金:一般1000円/大学生500円
※高校生以下は入館料無料
開館時間:9時30分~16時30分(入館は16時00分まで)
休館日:毎週月曜日(月曜日が休日の場合は開館し、翌日休館)
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