更新日:2022年11月05日 19:36
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ニューヨーク在住の記者が日本で感じた違和感「マスク着用義務はないのに」

ニューヨークも日本も、ノーマスクは法律違反ではなく罰則もない

10月11日の羽田行きの関西空港搭乗口1

関西空港・国内線の羽田空港行き粋搭乗口(10月11日撮影)

 一度ゲームオーバーになったノーマスクチャレンジを、再度始めてみた。まず、東京から大阪に行くため羽田空港に向かったが、そのバスではマスク着用を求められた。外国人が来たばかりの成田空港発のバスでは注意をされなかったのに、国内から空港に向かうバスは日本人が多いので注意をするということなのだろうか。その基準がよくわからなかった。羽田空港に着くと、航空会社が管理している場所(搭乗口や検査場前、航空機内など)でマスク着用を求められた。ただし空港内では注意を受けることはなかった。  マスク着用を「お願いいたします」というアナウンスが、日本中に溢れている。ニューヨークでは一時期、マスク着用が義務化された。しかし義務化が全解除後された現在は、日本と同様にマスク着用は「推奨」となっている。つまり、政府や行政などからの「お願いいたします」や「推奨」は、日本もニューヨークも同じ。マスクを着用するかどうかはそれぞれ自分で決めるということだ。  それが現在のニューヨークでの「マスク着用の推奨」の意味だ。ところが、日本の場合は「推奨」が半ば「強制」となってしまう。日本ではマスクを「推奨」「着用しましょう」という、強制とも義務とも言えない言葉が氾濫している。  ニューヨークでも日本でも、ノーマスクは法律違反ではなく罰則規定もない。今後、日本に初めて来る外国人観光客もマスクはしないだろう。もし彼らにマスクを着用してほしいのであれば、法律で縛らなければならない。日本人は法律ではなく「ルール」や「空気」に支配されるが、外国人はそうではない。

マスクを着用しない外国人の来日増加が、日本人の着用率を下げる!?

アートブックフェアに並ぶニューヨークの人々(10月15日撮影)

アートブックフェアに並ぶニューヨークの人々(10月15日撮影)

 日本では10月11日以降、外国人は3回のワクチンを接種(もしくは陰性証明書の提示)すれば入国可能となった。日本入国の際の水際対策が緩和されて、来日する外国人が増えている。また、これまでは日本入国の条件として「行動計画書つきのビザが必要」から「観光ツアーのみOK」に緩和され、マスクを添乗員がツアー客に求めていた。しかし、これでは行き場所を決められた北朝鮮ツアーと変わりがなかった。10月11日以降の緩和は、日本で個人による自由旅行が解禁されたことを意味する。  今後、マスクをしない外国人観光客がさらに増えることは間違いない。法的根拠なしで外国人に従わせることは難しいからだ。それに乗ずるように、日本人でもマスクを着用しない人が増えるだろう。  しかし政府はそんな外国人観光客を利用して、なし崩し的に日本人のマスク着用を緩めていっていいのだろうか。自らの国で決めずに外国人の力を借りるのは情けない限りだ。結局のところ、日本はワクチンが普及してもマスク着用については変わらず、何のためのワクチン接種なのかもわからなくなっている。欧米では、ワクチン接種は「あるべき社会」を実現するためだ。その社会には、ノーマスクで生活するということも含まれる。
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「法による支配」ではなく「空気による支配」の日本社会
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ジャーナリスト、ニューヨーク在住。その他ビジネスに携わる。現代ビジネスほか、The Tokyo Postでも「リベラルな街から」を連載中。

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