更新日:2022年11月05日 19:36
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ニューヨーク在住の記者が日本で感じた違和感「マスク着用義務はないのに」

「法による支配」ではなく「空気による支配」の日本社会

10月15日ニューヨークの地下鉄車内

ニューヨークでは、地下鉄車内でのマスク着用義務も解除された(10月15日撮影)

「法による支配」と書けば堅苦しい。しかし「空気による支配」と「法による支配」ではメリハリが違ってくる。また、どうも日本では誤解があるようだが「海外の人たちは罰金があったからマスクを着用していた」というのは誤りだ。ニューヨークにおいてマスク未着用で罰金を払わされたというケースは聞いたことがない。外国人は罰金ではなく、その国の法に従う。その癖がついているのだ。 「ピーチ・アビエーション」の飛行機内でマスク着用を拒否し、乗務員とトラブルとなった元大学職員の公判が始まっている。誤解のないように書いておくと、この裁判は「マスク着用の有無」が違法かどうかを争っているのではない。添乗員が「マスク着用」を何度もお願いしたにもかかわらず、元大学職員が拒否をして乗務員の腕を掴み、ケガをさせたため緊急着陸した。そのことが威力業務妨害や傷害などの罪に問われているのだ。マスク着用の法的根拠を問うのであれば、その場ではマスクをして、着陸後に訴訟を起こせばいい案件だともいえる。  いまの日本で、もし政府が本当にマスクを解除したいのであれば、来週あたりに「マスク着用義務化」を法なり条例なりで決め、再来週にマスク義務化を解除すればいい。そして流行期にはまた義務化すればいい。それが「法による支配」だ。

日本人は、マスクを着けた状態が「あるべき社会」と考えている!?

ニューヨーク・ソーホーの人混み(8月撮影)

ニューヨーク・ソーホーの人混み(8月撮影)

 10月7日、岸田首相は屋内でのマスク着用に関し、屋外については「原則として不要」「人との距離が確保できて会話をほとんど行わない場合は不要」と話した。しかし、こうした首相の弁でものごとが決まるのは法治国家とはいえない。殿様の一存で決める江戸時代のようなものだ。マスク着用の指示において、アメリカに大統領はいても王様はいない。  アメリカのFDA(食品医薬品局)は各種マスクについて「(一般的な)マスクはCDC(アメリカ疾病予防管理センター)の推奨に従って『感染源コントロール』のために使用するものであり、個人の防護用品ではない」と説明している。  感染防護として効果があるマスクは、N95のような医療用マスクだけだ。基本的に日本人がつけている一般的なマスクは、感染者の「感染源コントロール」にすぎず「防護用品」でない。ワクチンがある現在において、もはやマスクは流行期につける代物だろう。それとも日本人にとって「あるべき社会」はマスクを着用する社会なのだろうか。  最後に「もはや欧米では、新型コロナ感染有無の検査をしていない」という誤解を、一部の日本人が持っているようなので書いておく。10月26日のニューヨーク州の検査数は8万2117名、陽性者は5106名、陽性率は約6.2%だった。この陽性率が10%を超えると筆者は感染対策に気をつけるようにしているが、相変わらず日本では感染者数だけを追っている。自分で考えて判断するためには、感染者数だけではなく、検査数から割り出した陽性率の確認が必須だろう。 文・写真/笹野大輔
ジャーナリスト、ニューヨーク在住。その他ビジネスに携わる。現代ビジネスほか、The Tokyo Postでも「リベラルな街から」を連載中。
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