エンタメ

井浦新が語る「欲を持つことの大切さ」

(柴田)恭兵さんの存在感はものすごく大きかった

井浦新――柴田さんとの共演について感想を聞かせてください。 幼少期、青春時代から、僕が俳優になる前から最前線にいられた方ですし、恭兵さんの姿を見て育ってますから、そういうフィルターはどうしてもかかってしまいます。ご一緒させてもらうことはそれだけで光栄なことで、最初は嬉しさでいっぱいでしたが、現場に入るとそのワクワク感はすべてプレッシャーへと変わりました(笑)。 二人のぶつかり合いが描かれていくには、ぶつかっていく前の段階もしっかり描いていかないと際立っていかない。幸せで楽しかった何気ない日常が崩壊していくという一連の流れのなかで、僕はもうその時点から全霊でぶつかっていかないとこの現場に立っていられないな、というくらい、恭兵さんの存在感はものすごく大きかったです。 現場では気を緩めるスキもないというか、それだけ恭兵さんの現場での居方がプロフェッショナルだと思いました。今回のドラマでの自分の財産は間違いなく、恭兵さんとの芝居のなかから得たものすべてです。芝居のなかで語り合えるものもたくさんあったんですけど、恭兵さんがどう現場にいるか、どんな姿でそこにいるのかということから、すべてが素敵でした。 ――もう少し具体的に、柴田さんのどういった部分がすごかったのでしょうか?  ずっと何かを発しているというわけでもない、芝居の“抜き差し”というか。それこそ刃のだしどころ、だしかた、鞘に収めているときの静けさ、柔らかさ。かといって何でもありの状態ではなく、緊張感もあるし、上品ですし……ひと言でいえば“品格”です。 部分部分を挙げるとキリがないのですが、総じて言うと“間合い”です。現場では笑顔で世間話もしてくださいますし、二人だけの空間で無言のままでもちゃんと言葉を感じ取れるというか。 ――実際に芝居を交わした者にしかわからない何かがあるのですね。 芝居のこと、それ以外の他愛もないことに対して答えてくださり、3か月ほどの撮影期間で心の距離は近づいたと思いますが、肩組んで一緒に頑張ろうぜ、みたいなノリでは決してなく、恭兵さんの程よい間合いをしっかり持っていて、そこから先に指先でも入ったら本当に斬られそうな緊張感が常にある。そこが本当に好きなんです。 だから、こちらも恭兵さんにかける言葉をキチンと選ぶんです。選ぶというより、自ずと選ばされている。ドラマの内容的にも現場が肉体的・精神的にしんどいのは当たり前のことですけど、それよりも恭兵さんと一緒に芝居ができる幸福度のほうが上回りました。
次のページ
自分はまだ「俳優」という「旅」の途中
1
2
3
4
株式会社ラーニャ代表取締役。ドラマや映画の執筆を行うライター。Twitter⇒@Yuichitter

記事一覧へ
おすすめ記事
ハッシュタグ