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井浦新が語る「欲を持つことの大切さ」

自分はまだ「俳優」という「旅」の途中

――でも、井浦さん自身も順調にキャリアを重ねていると思います。 常に挑戦をやめず、どんな役でもどんな作品でもぶつかっていくのですが、今回の作品はどんなにぶつかっても頂上にたどり着かないというか、たくさんできないことにぶつかった作品でもありました。まだまだ自分には課題があり、だからこそ挑戦できることがまだあることを思い知らされました。 恭兵さんの芝居は当然ながら全身全霊だけど、刀を抜いたように変わる瞬間がしっかりあるんです。僕なんか常に刀を抜いてないと落ち着かない。がむしゃらさだけでは決して乗り越えられない「壁」がそこにあるのを強く感じました。自分が50歳になる前に恭兵さんと真正面からぶつかることができて、本当に財産になりました。 ――井浦さんほどのキャリアでも自分を「まだまだ」と言うのですか。 まだまだです。自分の「形」をつくらず、毎回「新しいことに挑戦したい」と思ってこの仕事をしていますから、新しい現場に入るときの気持ちは新人の頃と変わりません。たかだか20数年のキャリアを振りかざすようなことはしたくないです。 ただ、自分が現場で最年長だったりすることも増えてきたなかで、今回のドラマで自分は年齢相応の位置というか。若い人たちもいれば大先輩もいるという、登場人物全員とお芝居させていただくなかで、自分がどんなことができるのか確かめながらやらせていただきました。 若い世代からは何ものにも囚われていないフレッシュな表現だったり、他の現場でしっかり学んできたものを振り絞ってくれたりする姿からたくましさを感じ取ることができましたし、キャリアを積んだ先輩たちからも学ぶことだらけでした。自分がまだ俳優という旅の途中に全然いるのだなということを突き付けられました。 ――他の俳優さんに聞いても「経験を積めば積むほど奥深さを知る」とよく言われます。 俳優という仕事にゴールがないことは自分でもなんとなくわかってはいたのですが、それでもまだスタート地点にだいぶ近いところにいるんだな、という認識です。恭兵さんをはじめ、大先輩が一つの芝居に苦悩しながら立ち向かう姿を目の当たりにすると「なんて仕事だ……」って思います(笑)。
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株式会社ラーニャ代表取締役。ドラマや映画の執筆を行うライター。Twitter⇒@Yuichitter

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