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俳優・奈緒が抱える「表現しきれないことへの後ろめたさ」

■市川実日子からもらった、大切にしたい言葉

奈緒――以前、インタビューしたときに奈緒さんが言っていた「恩送り」「俳優は労働者であり表現者でもある」という言葉が印象に残っています。今、奈緒さんが大切にしたい言葉はありますか? 共演するシーンはなかったのですが、先日、『TANG タング』という映画の舞台挨拶の合間に市川実日子さんとちょっとお話させていただいたんです。この作品のことではないのですが、俳優という仕事をするなかで、自分のなかに表現しきれないことへの違和感、後ろめたさみたいなものを時々、抱えてしまうんです、と。 ――市川さんは何と答えてくれたのですか。 実日子さんは「すごくわかる」と言ってくださいました。「『表現したい人』と『伝えたい人』がいて、どちらも素敵なことだけど、きっと奈緒ちゃんは『伝えたい人』なんじゃない?」って言われて、それがすごく自分のなかにしっくりきて。 まだ自分は「表現」するというところには至らないかもしれないけど、「伝えたい」という気持ちはあるから、そこをちゃんと見つけて大切にできたらいいのかなと。それは一つの指針みたいに新しく自分のなかにできたと思います。「伝えたい」って、すごくシンプルだけど大切なことのような気がします。 ――俳優として「働く」ことや「仕事」としての俳優についての考えを聞かせてください。 今までは「こういう役があるんですけど」というお話をいただいて、一緒にお仕事する方と自分の可能性をどんどん広げていったという感覚があるんですけど、これからは自分自身で広げていける、そういう存在になれたらいいなって、ここ最近すごく感じるようになっています。 今までは自分がお芝居をすることが好き、ということが一番にありましたが、今は毎日お芝居ができるくらい自分が好きなことをさせてもらえているので、その先に、以前話したような「恩送り」として、私に何か返せることは何かと考えたら、エンターテイメントとみなさんをつなぐことなのかなって。具体的にどんなことができるのかはこれから考えて形にしていきたいです。
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この秋はちょっと波に乗ってみようかな
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株式会社ラーニャ代表取締役。ドラマや映画の執筆を行うライター。Twitter⇒@Yuichitter

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