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俳優・奈緒が抱える「表現しきれないことへの後ろめたさ」

穏やかな佇まいと確かな演技力で着実にキャリアを積み重ね、旬の時期を迎えつつある俳優・奈緒。今秋、ついに民放プライム帯の連続ドラマで初主演の座を掴んだのだ。
奈緒

奈緒

日本テレビ系で放送中の『ファーストペンギン!』。タイトルは、最初に海に飛び込む勇気ある一羽を意味する。 ――以前、SPA!でインタビューをさせていたいたのが『あなたの番です』でブレイクした翌年のタイミングでした。そこから2年で、民放プライムタイムの主演を務めることについて、勝手ながら感慨深いものを感じています。 ありがとうございます。こうして一度でもお仕事でご一緒したり、取材で話を聞いていただいたりした方から「よかったですね」と言ってもらえたり、喜んでもらえたりするとすごく実感が湧いてきます。でも、今回のドラマもそうなんですけど、主人公1人がファーストペンギン(※最初に天敵だらけの海に飛び込む、勇気ある一羽)なのではなく、彼女に携わる漁師さんも含めてファーストペンギンなんですよね。 ――なるほど。 一緒に飛び込んでくれる仲間がいるからこそ飛び込めるのであって、私自身も改めて実感するところがありました。どんな仕事をするときでも挑むという気持ちは変わらないですけど、そのなかでもこれだけたくさんの方に見ていただける時間帯で作品を届けられるということは、自分のなかでも大きな挑戦だと思うので、すごく運命を感じています。ここまで来れたのも、周りの方々がいろいろな挑戦をさせてくださったからです。 ――では、奈緒さんにとってのファーストペンギン的な経験とは? 「このお仕事をやりたい」と思ったこともそうですが、20歳のときに上京したことはとても大きなタイミングだったと思います。知らない土地ですし、より強く「挑戦したい」と思ったのは上京したとき。自分にとっても大きな決断でした。 ――何が背中を押したのでしょう? 地元の福岡で一緒にお仕事してくださった方たちの応援と、自分が本当にお芝居が好きだったという気持ち、この二つにすごく背中を押されたと思います。「上京する」と決めたときはもうそこしか見えなくて、それに向けて一直線だったんですけど、いざ上京してみると、お仕事がない時間のなかで「これで食べていけるのかな」とか「この仕事を何歳まで続けられるんだろう」とか、いろいろ考えるようにはなりましたね。 ――そんななか、ドラマや映画、舞台を問わず、これまで実に多くの作品に出演していますが、俳優として大切にしている姿勢や心情は何ですか。 あまり器用ではなく、「本当にこれでいいのかな?」と不安になることもありますが、今年出演した『恭しき娼婦』という舞台の演出を手がけていただいた栗山民也さんに、「決まりきったきれいなお芝居を見たいわけではなく、役者自身が舞台上で悩みもがいている姿を見るからこそ、人々は初めて出会う感情や声に触れ、とても幸せな気持ちになれる」という言葉をいただいたんです。 ――深い言葉ですね。 今まで「なんで上手くできないんだろう」と思っていたけど、上手くできなかったり、悩んだり、もがいたりする姿は、あってもいいのかなと。自分の一つの個性として受け入れて、大切に向き合っていこうと思うようになりました。「上手くやろう」「きれいにやろう」ってどうしてもしたくなっちゃうし、もちろんできたらいいですけど(笑)、自分はそっちではないのかなって。そのときの自分ができる精一杯の演技を、役とともにできたらいいなって思っています。
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株式会社ラーニャ代表取締役。ドラマや映画の執筆を行うライター。Twitter⇒@Yuichitter

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