ベスト16で散った日本代表。クロアチア戦で露呈した「疑問に感じる采配」
現在、カタールで行われているFIFAワールドカップは、負ければ即敗退が決定するノックアウトラウンドに突入している。グループEを首位通過した日本代表は、12月5日に初のベスト8進出を目指してクロアチア代表と対戦した。
「3-4-3」の布陣で臨んだ日本は、前半43分に右コーナーキックの流れから前田大然が先制点を挙げる。今大会では初めてリードした展開で後半に入ったが、後半10分に左から入ったクロスボールをイバン・ペリシッチに頭で決められて同点とされた。その後、三笘薫や浅野拓磨らを投入した日本は追加点を狙いにいったが、相手ゴールは遠く1-1のまま90分間が過ぎた。延長戦になっても両者の得点は生まれず、ペナルティーキック(PK)方式で決着をつけることになった。そのPK方式で3本を相手GKに止められた日本は、1-1(PK:1-3)という結果となり、カタールの地から去ることが決まってしまった。
試合後に森保一監督が「選手たちは新時代を見せてくれた」とコメントしたとおり、優勝経験国で強豪のドイツ代表とスペイン代表に勝利を収めた功績は称賛に値するし、目標のベスト8以上を達成できなかったからといって、世界を驚かせた結果は然るべき評価をされるべきだ。
日本はしっかりと戦略を練って挑めば世界のどんな強豪国を相手にしても勝ち得るレベルに到達したことを示してくれた。これまでは戦略があっても為す術なく負けていたが、それが勝つ可能性を見出せるようになった。これは日本が大きく成長した証であり、選手個々が力をつけた結果だろう。
しかし、当然ながら戦略・戦術を誤れば勝てないということだ。それが、まさにクロアチア戦だった。ドイツ戦もスペイン戦も、相手の良い部分を徹底的に消すことに重きを置きつつ、勝つために得点を奪う方法を見出した戦略だった。その結果として、3バックという布陣で守備を固めるという戦術が生まれた。クロアチア戦も同様の戦略で臨むと考えられたが、2つの成功体験を経て根本の考え方を忘れてしまい、手段であるはずの戦術が目的とすり替わってしまったように感じている。
クロアチアの布陣は「4-3-3」でサイドから相手陣内深くへの進入を狙い、中盤選手のセンスを持ってゴールに迫るスタイルだ。また、守備時には屈強なセンターバックが壁となり、中盤の豊富な運動量でカバーすることを基本としている。
それに対して日本は「3-4-3」の布陣で臨み、ドイツやスペイン戦と同様に最終ラインに5人を並べるシステムで、素早く相手ゴールへ迫り得点を狙うというスタイルで挑んだ。守備を固める戦術を取ったが故に、相手にほとんど好機をつくらせず、前半終了時点で相手のシュート数を3本、そのうち枠内シュートを1本に抑えることができた。しかも前半43分には、右コーナーキックで直接ゴール前には放り込まずショートコーナーを選択。その流れから堂安律が入れたクロスを吉田麻也が触り、その落ちたボールに前田大然が飛び込み先制点を挙げた。ここまでは考え得る最良のシナリオだったのだろう。
実際に相手のストロングポイントである左サイドは、伊東純也と冨安健洋がマークを入れ替えながらうまく抑えており、名手ペリシッチにほとんど仕事をさせなかった。そもそも、最終ラインに5人を並べる布陣はドイツやスペインを相手に守りきっているわけで、他のどのチームを相手にしても守りきれるだろう。ただし、その布陣は少ない人数で攻撃しなければならないという短所を抱えている。これは前線に人数をかけてくるドイツやスペインが相手だと、後方に残っている人数が少ないので攻撃側が少ない人数でも優位に立てる可能性がある。
強豪国相手に善戦も…
最終ラインに5人並べる必然性は?
スポーツライター。日本最大級だったサッカーの有料メディアを有するIT企業で、コンテンツ制作を行いスポーツ業界と関わり始める。そのなかで有名海外クラブとのビジネス立ち上げなどに関わる。その後サッカー専門誌「ストライカーDX」編集部を経て、独立。現在はサッカーを中心にスポーツコンテンツ制作に携わる
記事一覧へ
記事一覧へ
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ