更新日:2023年12月22日 20:40
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「電気代が必ず高くなってしまう家」一級建築士が警告する“致命的なリスク”

日本の高気密高断熱のレベルがかなり低い

断熱性能基準の比較

欧米諸国と比べて圧倒的に低い日本の断熱性能基準

 現在の日本の木造住宅はほとんどが低気密低断熱です。こうした家屋が現在の光熱費高騰の波をもろにかぶっています。  その一方で、10年ほど前から高気密高断熱化された家も普及され始めました。しかし、今の日本は玉石混淆といった状況で、正確な情報が世の中にまだ広がっているわけではありません。  日本の住宅業界自体、この高気密高断熱という知識が浸透しきっていませんし、さらに世界的に見たら、日本の高気密高断熱のレベルがかなり低いのが現状です。  具体的に見ていきましょう。 家の断熱性は「UA値」という指標で示され、数字が小さいほど断熱性能が高いということを意味します。その基準値は地域によって異なり、全国は8つの地域に分けられており、東京は「6地域」に該当します。  国土交通省が2013年に発表した資料によると、6地域の基準値は0.87です。それに対して、アメリカやフランスは半分以下の0.4程度。つまり、日本における高断熱という基準は、アメリカやフランスからみたら中断熱程度しかありません。

世界的に見れば「低気密~中気密中断熱」

 気密に関してはどうでしょうか? 実はほかの先進国には気密の基準値があるのですが、現在の日本では気密の基準値が撤廃されてなくなっています。省エネ基準がどんどん厳しくなっていったはずなのに、現在の日本では気密に対しての基準値がなぜかありません。  気密性は「C値」という指標があり、1㎡の外壁の中に何㎠の穴があるかを示す単位のため、こちらも数字が小さいほど気密性が高くなります。  2002年まで国が制定していた基準値は太平洋沿岸で4程度、北海道で2でした。一方、ほかの先進国では基準があり、カナダでは0.9、スウェーデンでは0.6~0.7程度となっています。  現在の日本では気密の基準値がないため、日本独自の基準で「高気密高断熱」とうたわれている家でも、世界的に見れば「低気密~中気密中断熱」の家が多いのが現状です。
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「高気密高断熱の家」を手に入れるためには…
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1970年、神戸市生まれ。一級建築士、株式会社G proportion アーキテクツ代表取締役。「地球と人にやさしい建築を世界に」をテーマに、デザイン性、機能性、省エネ性や空間が人に与える心理的影響をまとめた空間心理学を組み込みながら設計活動を行っている。これまで120件の家や幼保園、福祉施設などの設計に携わってきた。クライアントには、上場会社の経営者やベストセラー作家をはじめ「住む人が幸せになる家」のコンセプトに共感する人が集い、全国で家づくりを展開中

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