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パリ五輪の新種目「ブレイキン」が凄い。“殴り合わないボクシング”で金メダルに期待

重力がどこかに行ってしまったような動き

世界でもトップクラスの男女日本人選手がしのぎを削る ©公益社団法人日本ダンススポーツ連盟

 文字通り、血がにじむ鍛錬を重ねたであろう驚異のムーブを披露する選手たち。まるで重力がどこかに行ってしまったような動きを音楽に合わせて繰り出す。見ているこちらは驚きとともに心が躍りだす。すると、壁沿いにいたスーツ姿のスタッフたちが「ヒュー!」と口笛を鳴らす。彼らも音楽と一緒に身体を揺らし、選手たちのショーを盛り上げた。  実は、大会運営の一助を担うスーツ姿のスタッフもほとんどがダンサー。ブレイキンがオリンピック競技になる前から活躍してきた人も多く、そのギャップに驚かされるほどスーツ姿で堅実な雰囲気を漂わせている。事実、記者会見の仕切りも見事だった。

最注目Shigekixのパフォーマンス

 一番の注目選手は、幼い頃から世界の舞台で活躍しながら、国内外の大きな大会で優勝を重ねてきたエースでトップスターのShigekix(ダンサーネーム)こと半井重幸選手(20歳)。ブレイキンの顔として、様々なメディアに出ているので知る人も多いだろう。

質問に答えるShigekix(20歳)。’18年のブエノスアイレスユース五輪の金メダリストだ

 Shigekixの凄さは言うなれば、世界を驚かせる強さという点では井上尚弥のようで、ロールモデルとなる存在感は大谷翔平のようであり、幼い頃から圧巻の技術で世界を魅了しているところは浅田真央のようなのだ(何度も成功と失敗を重ねて、見違える表現力を備えていっている点も)。  しかし、どれほど強くて技術があっても、必ずしも勝てないのがブレイキンの奥深いところ。いかに個性やカリスマ性を放って、音楽や会場と一体になれるかが肝になるからだ。「見ればわかる」ブレイキンは、勝負のスポーツでありながら、人々の心をつなげる希望でもある。 取材・文 松山ようこ
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