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パリ五輪の新種目「ブレイキン」が凄い。“殴り合わないボクシング”で金メダルに期待

ブレイクダンスがパリ五輪の新種目に

世界ランカーのshigekix選手の試技 ©公益社団法人日本ダンススポーツ連盟

「殴り合わないボクシングの試合」とも呼ばれながら、フランスではおじいちゃんやおばあちゃん世代や子どもを連れた家族も多く観戦にやってくる。そんな斬新さと懐の深さを合わせ持つのが「ブレイキン」だ。日本ではブレイクダンスの呼び名でも知られ、若者を中心に人気を博している。  2024年のパリオリンピック新種目にも採用された。しかも、日本のレベルの高さは以前から世界に知れ渡っている。東京オリンピックでは、スポーツクライミングやスケートボードなどの新種目で日本人メダリストが多く誕生したが、次のパリ大会でも快挙に期待が高まる。

ギャングの暴力支配に嫌気がさした’70年代のNYが発祥

 ブレイキンの歴史は、1970年代のニューヨークに遡る。貧困にあえぐブロンクス地区では暴力が絶えず、ギャングが抗争に明け暮れていた。そんな血で血を洗う戦いに嫌気がさし、ダンスで決闘しようとはじめたのが発祥といわれる。だから、勝負をバトル(戦い)と呼ぶし、挑発するような振り付けも印象的なのだ。

女性選手のYuika選手は笑顔で技を決める ©公益社団法人日本ダンススポーツ連盟

 そうした暗い歴史があるからか、昇華されたダンスには逆に暴力を寄せ付けないパワーがある。勝負を決する大切な要素は、ダンサーたち自身が心から楽しんで、音楽やファンとの一体感をより高めることにあるのだ。互いを傷つけることはなく、バトルが終われば互いを健闘しあうという”スポーツマンシップ”も見られるほど清々しい。限りなくエンターテイメント性とライブ感が強い“スポーツ”なのだ。  そのブレイキン国内最高峰の大会である「第4回全日本ブレイキン選手権」が、2月18日から19日まで、代々木第二体育館(東京都渋谷区)で開催される。同大会では、パリ五輪の代表を目指して男女トップ選手らがしのぎを削る。様々な判定基準やルールがあるが、要するに「見ればわかる」面白さは何よりの魅力だ。  大会開催を発表した記者会見も、他のスポーツにはないエンターテイメント性に満ちていた。大会に出場する男女トップ選手が、次々とパワフルなダンスを披露して登壇していったのだ。ダンサー登場に合わせて、場内の照明も落とされる。さっきまで大会概要を説明していた司会者がDJのように選手たちをコールした。
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重力がどこかに行ってしまったような動き
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