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過熱する中学受験「中高一貫校1000万円の教育投資」で偏差値はいくらあがる? 井川意高×藤沢数希

中学受験を煽るのは受験産業が儲けるため? 実はコスパのいい公立からの下剋上

井川意高藤沢:最近は受験対策まで学校でやってくれる中高一貫校が人気になってきていて、かつての御三家の武蔵は第二外国語を勉強させたり東大入試に役に立たないこともいろいろやっていて自由な校風で人気だったんですが、駒場東邦なんかが受験範囲を早く終わらせて高校3年生でたくさん入試問題の演習をするというオーソドックスな受験対策のカリキュラムで東大合格者数を伸ばした。そういう学校のほうが保護者にウケているようです。 神奈川の聖光学院なんかも学校のカリキュラムがいいみたいで、最近の東大合格実績がすごいです。関西では奈良県の西大和学園なんかがすごく伸びてきています。中高一貫校の共学トップはこの西大和と千葉の渋谷教育学園幕張ですね。あとは、堀江(貴文)さんの母校の久留米大学附設ですね。 井川:いまでは「開成・麻布・駒場東邦」が“新御三家”らしいですね。 ――一方で、藤沢さんは「無理して中学受験をさせるくらいなら、公立中学でもいい」と本に書いていました。 藤沢:昨今、中学受験が過熱していますが、文部科学省の学校基本調査によると、実は私立中学に通っているのは全体の8%程度でほとんど公立なんですね。調べたら、地方の旧帝国大学の合格者数の割合はそれとほぼ同じです。東大だけは有名私立一貫校の割合が突出して高まりますが、それでも東大でも半分は公立高校出身です。そう考えると、受験産業が煽るほど、中学受験に効果があるかは疑わしい。公立の教師は問題があるとかいろいろ言われていますが、勉強面に関しては昔と比べて公立の学校の質が上がっているように思います。 僕が子供のころの公立小学校には変な狂った先生がいろいろいたけど、僕が勉強を見ていた身内の子供はみんな公立小学校なんですが、なんか先生がみんなまともな人たちばかりで、無料でこんな教育が受けられるなんて日本はすごいな、と思いました。 井川:教師の質でいうと、当時の筑駒はヤバかったですよ。日本史の教師は自分が専門だからって高校1年生のときに明治六年の政変からはじまって、卒業するときもまだ明治十四年の政変だった(笑)。物理の教師も中学2年生のときにいきなり大学で習うような加速度円運動の公式とかを出してきて、「どうだ、難しいだろう」とか言って。おかげで物理が嫌いになりましたよ。 藤沢:それは筑駒のいい意味で狂った部分ですよね(笑)。でも、最近は、そういう変な教師は、良くも悪くもいなくなっていますね。公立でも私立でも。筑駒は国立ですが。

1000万円の教育費、偏差値はどれだけ上がる?

――私立の中高一貫校に行くには、金銭的な問題もつきまといます。藤沢さんによれば、私立の学校は6年間で授業料が約600万円、プラスそこに入るための中学受験塾で300万円、受験料などを合わせると(公立に行った場合と比べて)1000万円近い追加の教育資金が求められるという。 井川:筑駒は国立だから授業料が安かったですね。当時、中学は授業料がなくて教材費だけだったし、高校でも半期1万1000円。貧乏だけど優秀だから筑駒に来たという人も多かったですね。 藤沢:1000万円の重みは各家庭で違いますけど、それが負担だと感じるなら、中学受験をしないことで浮かせた教育資金で短期留学などに回して英語の勉強をがんばって、公立中学から高校受験をしたほうがコストパフォーマンスはいいでしょうね。 井川:でも、小学生の頃からしっかり勉強していたほうが、その分、アドバンテージがあるんじゃないですか? 藤沢:それが、必ずしもそうとは言い切れないんですよ。僕は職業柄か、この1000万円で偏差値が期待値としてはどれぐらい上がるのかいろいろ調べたんですよ。欲しいデータが手に入らなくて確定的なことは言えないんですが、中学受験と私立中高一貫校の教育効果って、いろいろ断片的なエビデンスで見ていくと、せいぜい偏差値+1~+3ぐらいかな、といったところです。つまり、期待値としては、大学がワンランク上がるかもしれないくらいです。 井川:なるほど。
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子供が現代の学歴獲得競争で
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