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過熱する中学受験「中高一貫校1000万円の教育投資」で偏差値はいくらあがる? 井川意高×藤沢数希

全国の中学受験は終了、大学受験もピークを迎え、国公立大学の二次試験が近づいてきた。受験生とその親御さんにとっては勝負の季節だ。少子化が進むなかでも、受験競争は過熱する一方。現代の教育産業に鋭く切り込んだ『コスパで考える学歴攻略法』(新潮新書)の著者である藤沢数希氏と、東大法学部卒で大王製紙会長と輝かしい経歴を持ちながら“106億円をカジノで失った男”として知られる井川意高氏が対談。前編では、近年過熱する中高一貫校への中学受験について語ってもらった。
井川意高 藤沢数希

(写真左から)井川意高氏、藤沢数希氏

井川意高、中学受験で筑駒と麻布に合格

――昨今、東大などの難関大学に合格するためには、小学生のときからSAPIXなどの中学受験塾で勉強をして有名中高一貫校に入るのが高学歴になるための王道ルートだという風潮があるように感じます。井川さんは中学受験で日本最難関の筑波大学附属駒場中学に進学し、その後、東大文一に現役合格しました。 井川:小学校では成績が良く、小学4年生のとき、東京に家族旅行に行ったついでに代々木ゼミナールの模擬試験を受けさせられましてね。特別に受験勉強していたわけではなかったのですが、たまたま得意な問題ばかり出て全国2位になっちゃったんですよ。それで親父の教育熱に火がついて、そこからは優秀な社員を家庭教師につけては毎日数時間、受験勉強させられていました。それで、筑駒(つくこま)と麻布に合格しました。 藤沢:東大「合格者数」1位はずっと開成高校なんですけど、開成は学生数が多いから「合格率」で見れば筑駒が日本トップなんですね。東京の筑駒と関西の灘が日本の最難関を競っている2校です。本来、高校の実力は「合格率」、もっと言えば「現役合格率」のほうが実力を表すのにふさわしいと思って、僕の本では、東大と京大の2022年2月入試での現役合格率を様々な資料から計算しました。灘はこれで見ると5位だけど、京大医学部に現役でたくさん合格しているんで、やはり日本の最難関は筑駒と灘なんですよね。その中でも、東京一極集中のせいか、最近は筑駒が優勢になってきていると思います。東京トップの筑駒の定員は120人なので、3000人も合格する東大に入るより難しいですね。
東大合格率

現役合格率5%以上の高校を掲載。出所:インターエデュ、朝日新聞EduA、サンダー毎日、週刊朝日、大学通信、各校ウェブサイトから藤沢氏が作成。

東大合格率 藤沢数希

現役合格率5%以上の高校を掲載。出所:インターエデュ、朝日新聞EduA、サンダー毎日、週刊朝日、大学通信、各校ウェブサイトから藤沢氏が作成。

学年ビリから東大文一に現役合格

井川:でも、筑駒に入ってからはそんなに勉強しなくなっちゃってね。筑駒は校則があってないようなもので、制服や髪型の規制もないし、出席すら自由。大学と同じように7割以上出席していればOKで、期末試験で70点以上取れれば単位がもらえる仕組みでした。だから、出席日数を計算して、午後の授業を休んではパチンコに行ったり、麻雀をしていたら、すぐに学年でビリっけつになりましたよ。 藤沢:それでお父さんが怒って、ゴルフクラブで殴られながら勉強したと『熔ける』(幻冬舎)に書いてありましたね。 井川:そうそう(笑)。それからは親父がゴルフクラブ片手に、つきっきりで勉強を見ることになって。それもあって、高校3年生のときには駿台の夏記特別模試で総合全国20位ぐらいまで行ったかな。おかげで東大文一にも合格したと思っていますよ。 藤沢:話は戻りますけど、井川さんの最初の本の『熔ける』なんですが、正直、僕はギャンブルのほうは特に面白いと思わなかったんですよね。バカラなんて数学的にどうなるか最初から決まっていて、期待値がマイナスだから長いことやったらそれに収束してカジノ運営側が勝つだけで、別にやらなくても結論がわかってる。実際にその通りになっただけなんですよね。 でも、父と息子である井川さんの家庭の教育の話は、僕にとってはめちゃくちゃ面白かったんです。そして、お父さんの期待に応えて、井川さんは大学も最難関の東大文一に現役合格しちゃうんですよね。いまは官僚の人気がなくなっていますが、当時は東大法学部に進める文一が東大の中で頭ひとつ抜けた、東大の中でも最難関だったんですよね。 井川:親父は慶應だったんですが、東大合格は大喜びしてくれましたね。合格祝いにBMW 635CSiを買ってくれて、当時の値段で1000万円ぐらいでしたね。 藤沢:東大時代にもいろいろ遊んでいたようですね(笑)。 井川:いま思うと、筑駒ではなく麻布に行って、高校時代からちゃんと遊んでおけば、ひょっとしたらこうはならなかったかもしれない、と。 藤沢:麻布も基本的に校則がなかったり、勉強も生徒の自主性にある程度委ねたりしていますね。受験対策は塾に行ったり、各自が勝手にやるイメージです。 井川:麻布は校則がない代わりに、「鉄下駄、授業中の出前、賭け麻雀禁止」っていう暗黙のルールがあるっていうのは、本当らしいですね(笑)。
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中学受験を煽るのは受験産業が儲けるため?
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コスパで考える学歴攻略法

子供が現代の学歴獲得競争で
勝ち抜くための戦略

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