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パワハラに過敏になる上司が続出。日本の企業が“人材投資”を行わない理由とは

 日本企業は人材投資の規模が国際的に見て低い。企業の人材投資(OJT以外)の2010~2014年における国際比較を見るとアメリカ(2.08)、フランス(1.78)だったのに対して日本(0.10)はかなり消極的だった。  一方、従業員側も国際的に見てあまり学んでいない。パーソル総合研究所が2022年11月に発表した『グローバル就業実態・成長意識調査(2022年)』によると、「勤務先以外での学習や自己啓発への投資」について、「とくに何もおこなっていない」という回答の割合は、中国(9.2)、アメリカ(7.3)、ドイツ(16.9)だったが、日本(42.0)と大きく差を離す結果となった。  企業は投資をせず、従業員は自主的に学ばず、人材がなかなか育たない状況と言っていいだろう。とはいえ、人材を育てなければ企業として生存することは難しいため、その役割は上司が担わなくてはいけなくなるのではないか。『部下ができたら身につけたい 人を伸ばす技術』(‎コスミック出版)著者の平田裕之氏に話を聞いた。

人材投資を理解していない?

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 そもそも、企業が行う人材投資とはどういったものが挙げられるのか。平田氏は「社内のセミナー・研修、OJTが挙げられます」と回答。 「資格取得への補助金を出す制度を設ける企業も含まれるでしょう。他にも、学生向けに行うインターンシップ制度なども人材投資のひとつです。また、セミナーや研修もかつては主に集合する形式でしたが、コロナ禍以降はオンデマンド型の研修で、隙間時間に各自が行える形式を導入した企業も少なくありません」  次に日本企業が人材投資に後ろ向きな理由を聞く。ここ20~30年間は“終わりの見えないデフレ下”のため、企業としても人材投資に消極的なのは無理もない気がするが、「日本はもともと“就職してから少しずつ仕事を覚えていく”というOJT型の人材育成をしてきました。ただ上司に指導役としてだけでなくプレーヤーとしての役割を過剰に求めるようになり、部下を育成する時間を確保できなくなりました」と説明。 「さらには上下関係に基づく体質の指導が“パワハラ”と捉えられるようになり、指導のあり方も変わりました。人材育成を取り巻く環境全般が崩壊したにもかかわらず、そこから変化できていない印象です。もちろんデフレの影響もありますが、そもそも『“人材投資”と言われてもピンと来ない』という経営層が多いことが背景にあるのではないでしょうか」

学校教育の弊害

 学ばない社会人が多い要因について「学ぶことが楽しいこと・自分にとって有益なこと、という認識がないからではないでしょうか」と平田氏は続ける。 「学んで技術を身につければ、時給の高い仕事に就けたり、営業成績が上がるなど、自分の将来のためになることを知っていれば必死に学ぶでしょう。しかし、“自分に役立つ学び”があることを経験していないため知らない人は多い。これは学校教育の弊害です。そのため、勉強してスキルを身につけ、単価の高い仕事をして時間を作り、勉強に時間を割くという循環を作ることは、就職後からでは遅いように思います」  学校教育は試験のため、進学するための勉強に偏っており、いわば“勉強のための勉強”になっている。“就職後の勉強の大切さ”も学校は教える必要があるかもしれない。
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50代が大学に通うアメリカとの違い
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フリーライター。主に政治経済、社会問題に関する記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。Twitter:@mochizukiyuuki

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