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「戦時下のウクライナ」を訪れた旅行作家が語る“ロシアの恐ろしさ”

ウクライナの戦場は悲惨な状況

ヴァルナのバー

ブルガリアのヴァルナのバーでまったりする嵐氏

——ウクライナ戦争は始まって1年以上経っていますが、こんなに長く続くとは思っていなかったですよね。 :最初はプーチンもそう思ってたんじゃないですか。当初の予定では1日か2日でキーウを落として、そうするとゼレンスキーが亡命するじゃないですか。そこで自分の傀儡を大統領にして支配するという流れを考えていたんじゃないかな。 ところが、ウクライナが想像以上のすさまじい抵抗をしたんですよね。ダムを決壊させたりとか、たぶん将来映画になるくらいの、ものすごいレベルの抵抗なんですよね。そういうふうになっちゃったので、ロシアも引くに引けなくなった。 今はベトナムとかタイとかはロシア人だらけですよ。ある程度お金がある人たちは、徴兵されるかもしれないからどんどん国外に逃げている。でも、外国ではロシア発行のクレジットカードが使えないから、カザフスタンかどこかでカードを作ってから、ほかの国に行ったりしている人もいるみたい。 ——ウクライナ戦争は今後どうなっていくと見ていますか? :昨日も専門家の方といろいろ話したけど、非常に良くない状況だよね。まず、ロシアはこの2月か3月に大攻勢をかけてくるんじゃないかと思う(この取材が行われたのは2月上旬)。そこで恐らくキーウまでは来られないだろうけど、結構押されると思うの。ウクライナは今、高性能な飛行機とか戦車を援助してもらえることになったんだけど、ああいうものってすぐに使えるわけじゃないんですよ。運転の仕方を覚えたり、訓練したりしなきゃいけないわけだから、時間がかかる。そうするとロシアの方が何を考えるかっていうと、その前にやらなきゃダメだ、っていうことになる。 現地のボランティアの人に聞くと、戦場ではジャーナリストだろうとなんだろうとリンチされたり、生きたまま首切られたり、女性は片っ端からレイプされたり、本当に悲惨な状況ですよ。ただ、5月、6月くらいにはまたウクライナも反抗するだろうし、要するにもうしばらくはこういう感じだと思う。ただ、現地で話したウクライナ人はみんな長期戦になるのは当たり前だって考えてた。すぐには終わらないよ、って。

ロシアの恐ろしさ

——日本人の感覚だと、最初はすぐに終わるのかなと思っていましたよね。 :向こうの人はもう覚悟を決めている。絶対に戦い続けて、最後には勝つ、って。ただ、これが本当に面倒臭いのが、別にロシアとウクライナだけのことじゃないんですよ。まずアメリカが参戦しているよね。アメリカの中でも、そんなことにお金使ってないでもっと国内のことをやれ、っていう人もいるし。バイデンが辞めた後にどうなるかもわからないし。ヨーロッパでは、ロシアと仲が悪くなるとエネルギー代が高くなるからもう早く終われよ、迷惑だよ、っていう声もあるし。極端な話、もうウクライナを助けなくてもいいんじゃない? っていう人もいるわけよ。 ——あと、ロシアが核を使うかどうかっていう問題もありますよね。最悪の場合、第三次世界大戦になるかもしれない。嵐さんは以前、ロシアを訪れて『おそロシアに行ってきた』(彩図社)という旅行記も出版されていますが、どう思いますか? :そうなんですよ。それでウクライナ側はロシアに攻撃できないっていうのが厄介なんですよね。一方的に侵攻されているゼレンスキーがブチギレて、モスクワを火の海にすることもできなくはないんだけど、そうするとロシア側に(核を使う)大義名分が立つわけですよ。キーウを攻撃されているからその報復だと言っても、それは通用しないからね。 しかもプーチンの周りにいるのって、イエスマンじゃなくてもっと右の人も多くて、プーチンが黙ってると「なんで黙っているんだ」っていう感じなんですよ。だから、たとえプーチンが病気とかで亡くなったり暗殺されたりしても、次に出てくるのはもっとヤバいやつっていう可能性もある。そういうシステムができあがっちゃってるから、先がないですよ。 ——そもそも普通の感覚では、いくらプーチンがヤバいと言っても、自分から戦争を仕掛けるわけがないと思っていたじゃないですか。でも、実際にはそれが起こってしまったわけだから「さすがに核兵器は使うわけがない」っていう今の常識的な感覚も覆される可能性がありますよね。 :そう、本当にやる可能性ありますよ。そこが怖いね。 <取材・文/ラリー遠田>
お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『教養としての平成お笑い史』など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで
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