「なんで女なんか採用してんねん!」と怒られた過去
天使さんは、AM6:30-11:30に出勤している、いわゆる“朝ホスト”。それでも月の売上1400万達成
――最初は隠していたんですね。
天使 でも、やっぱり“声”でわかるので、キャストを含め従業員は全員女性であることを知っていました。お客様も一度接客したらわかる。ホストでは初回で来店したお客様に、キャスト全員が一度代わる代わる接客します。そこで僕が女性であると知って興味を持ってくれる人もいましたし、内勤(ボーイのこと)に「あの人女性ですか?」と他の人に確認されて避けられたこともありました。先輩ホストのお客様に「なんで女なんか採用してんねん!」と怒られたこともありました。申し訳ないな、と最初は思っていましたね。でも、今は認められている……はず(笑)。
――実際に働いてみて、女性であることで困ったことはありましたか?
天使 正直言って、まったくないです。戸籍上の性別が違うだけで、働くキャストとして、そこに性差はない。着替えるロッカーも一緒ですからね。
――お店のYOUTUBEでは、“生理のときは生理と言う”とも発言していました。
天使 あれはBBQで川に落とされそうになって、「生理だからやめて!」と逃げたんですよ(笑)。僕は自分を特別な存在とも思ってなくて、ただの一人のホストだと思っている。もちろん、僕がホストになりたての頃は、周囲も意識していたかもしれない。でも、お客様から指名も増えて、周囲を認めてくれて、店に天使ニアがいることが、働いていることが普通になった感じです。いい関係性が築けていると思います。今では下ネタの話も普通にしますからね(笑)。
「今年は売上1億を目指したい」と話す天使さん。
――お客様はどういう人が多いのでしょうか?
天使 オタク系が多いかな(笑)。ジャニーズの追っかけだったり、女性アイドル好き、アニメ好きだったり。別にレズビアンとかは多くないです、普通の女性。とくに女性であることを公表してから、お客様は3倍近くに跳ね上がりました。代表には口止めされていたけれど、ある程度売上ができたので、もういいだろう!と思い解禁しました(笑)。
――先月の売上1400万と聞きました。
天使 役職があがる“昇格祭”があって、僕のお姫様たちがめちゃめちゃ頑張ってくれたおかげです。指名も月100本。なので、今年の売上は年間1億を目指せたらな……と思っています。ただ、お姫様たちには無理はさせたくない。辛いの……嫌じゃないですか(笑)。
――嫌ですねぇ(笑)。
天使 綺麗事を言うようですが、お客様が幸せじゃなかったら 意味がない。幸せじゃないのに払われるお金なんて、価値がない。だから支払いに苦しそうなお客様には、「無理して来なくていいし、お金使わないで」と言いますよ。それでも支払いたい、というお客様もなかにはいるので、そのときは“一緒に不幸になるしかないな”と思います。もちろん、ホストとしてお客様には最大限の接客もします。同伴もアフターも。
――なるほど。では、今後の目標を。
天使 正直言えば、別にホストクラブの経営側に回りたいとは思っていません。だから売上などの目標を達成したら……シーシャ屋などに転身したいです。歌舞伎町にはあと2~3年居たら、いい方かな。お金…貯められないけど貯めています(笑)。美容などに使っちゃうんですよね。
インタビューの回答でも、女性がホストをしていることが“自然”であることが感じられた。売上という実力で、周囲を納得させたのも大きいだろう。多様性が進む現代社会において、彼のように実力で性差の垣根をなくす存在が、どこの業界にも増えていきそうだ。
(取材・文/加藤浩之 撮影/武田敏将)