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2023年春ドラマ「コア視聴率」BEST3。テレビマンが泣き笑う“CM売上高への影響”も考察する

テレビマンが関心を寄せるコア視聴率

ラストマン

TBS番組公式HPより

 春ドラマが始まった。プライム帯(午後7~11時)に16本ある。視聴率はどうなっているのだろう。  視聴率と質は別次元である。しかし、視聴率が番組への注目度の指標で、現時点では民放ビジネスの根幹にあるのは事実。日本の場合は3年前に個人視聴率が基準値になって以降、その中から13~49歳を切り取ったコア視聴率が各局のCM売上高を大きく左右するようになった。スポンサーが消費行動の活発なコアの視聴者を望むからだ。  一方、視聴者側のコアの捉え方は「40代までの視聴者は、こんな番組を観ているのか」といった程度でいいのではないか。視聴率を知ること自体は悪いことではないはず。世間の関心を知った上で好みの番組を観ればいいのだから。また、世帯視聴率は既に実務では使われていない。視聴実態が見えないからだ。  個人視聴率が1%で約42万人(関東地方)と明確化しているのに対し、世帯視聴率は5人家族が全員で観ていようが、1人で観ていようが、同等にカウントしてしまう。観ている人の数は不明。年齢や性別も分からない。個人視聴率が生まれたら使われるはずがない。  春ドラマのコアのベスト3を見てみたい(4月17日~23日、ビデオリサーチ調べ、関東地区)。ただし、28日スタートのテレビ東京『弁護士ソドム』(金曜午後8時)、30日からのテレビ朝日『日曜の夜ぐらいは・・・』(日曜午後10時)は含まない。

2023年春ドラマのBEST3

①TBS『日曜劇場 ラストマン-全盲の捜査官-』(日曜午後9時)コア5・5% 個人8・8% (世帯14・7%)※25分拡大 ②フジテレビ『風間公親―教場0―』(月曜午後9時)コア3・8% 個人6・6% (世帯10・7%) ③TBS『王様に捧ぐ薬指』(火曜午後10時)コア3・6% 個人4・3% (世帯7・5%)※15分拡大  第1話だった『ラストマン』は横綱相撲を取った。人気者の福山雅治(54)が全盲のFBI特別捜査官・皆実広見に扮し、アテンド役の警察庁幹部・護道心太朗を演じたのはやはり売れっ子の大泉洋(50)。役柄もキャスティングも絶妙だった。皆実は超人的な男。福山は同じ日曜劇場の『集団左遷!!』(2019年)で等身大の銀行マンを演じたが、やはり超人役がハマる。フジ『ガリレオ』(2007年)の湯川学もそうだった。  1つのキャラクターで押し通す俳優が、どんな役でも演じる俳優より劣るわけでは決してない。誰もが名優と認める高倉健さん、渥美清さん、大滝秀治さんらは1つのキャラを守り抜いた。福山も超人役を続けるべきではないか。  第1話は無差別連続殺人事件が扱われながら、暗さがほとんどなかった。これも高視聴率の一因だろう。死者を出さなかったし、皆実と護道の会話がユーモラスで何度もクスリとさせた。共生がテーマの1つになっているのもいい。  2位のフジ『―教場0―』はミステリー好きには堪えられない作品に違いない。『週刊文春ミステリーベスト10』で第1位になった長岡弘樹氏の原作を、ほぼ忠実に映像化している。  第1話の前半のタクシー車内での殺人で使われたダイイングメッセージは独創的だった。タクシーの走行ルートが犯人の名前を表していた。この長岡氏のアイディアにフジも惚れ込んだから第1話前半で使ったのだろう。  3位のTBS『王様に捧ぐ薬指』が放送されている火曜の午後10時台は若い視聴者向けに特化された枠と考えていいだろう。前作『夕暮れに、手をつなぐ』もメインターゲットが若者だったことは明らか。『王様――』の原作も若い女性向けの漫画誌『プチコミック』(小学館)に連載されている。  橋本環奈(24)が演じる貧乏なウエディングプランナー・羽田綾華が、結婚式場を盛り上げたい式場の社長・新田東郷と契約結婚する。演じているのは山田涼介(29)である。本当は冷めた関係の2人が、理想のカップルのフリをして、それを映像で公開する。「結婚っていい!」という世間へのアピールである。  中高年以上はすんなりとは受け入れがたい筋書きかも知れないが、若い視聴者はリアルより夢のある内容を求めているようだ。それはコアの高さに表れている。逆に綾華が貧しさに負け、あやしい副業でも始めたら、松本清張サスペンスばりにリアルだが、若い視聴者は引くはずだ。
教場

フジテレビ番組公式HPより

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放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員

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