実は靴の寿命を縮めている「セルフメンテナンスの失敗」とは?
こんにちは、シューフィッターこまつです。靴の設計、リペア、フィッティングの経験と知識を生かし、革靴からスニーカーまで、知られざる靴のイロハをみなさまにお伝えしていこうと思います。
コロナの影響も過去のものとなり、商談や重要な会議では顔を合わせる機会が増えてきました。そういったビジネスシーンにおいては、男性は革靴、女性であればパンプスの方が多いでしょう。
靴が汚れている、つぶれている、色が抜けていると、信用を失います。革靴を履くのであれば靴磨きとセット、スニーカーであれば清潔に保つ必要があります。と、言うのは簡単ですが、私は、15年間に及ぶ靴修理のかたわら靴磨きもやっていましたが、せっかくの勝負靴を、よかれと思ってやったセルフメンテナンスのせいで、回復不能にしてしまった痛々しいケースを無数に見てきました。それは、10万円超えの靴であろうが、関係ありません。いったい何が原因でしょうか?
ぶっちぎりで、これが原因です。コロンブスのナイトリキッドに代表される、いわゆる「液体クリーム」です。これを塗りすぎてしまって、革が石膏のように硬くなり、もろくなった結果、破れにつながるケースが後を絶ちません。革のダメージは相当もので、もとの風合いからははるかに遠ざかります。勘違いしてほしくないのは、決して液体クリームが悪いわけではありません。99%の方が使い方をまちがっているのです。
液体だし手も汚れないし、どんどん塗りたくなる気持ちはわかりますが、とにかく重ね塗りしすぎです。説明をよく読んでください。「3回に1回はクリーナーで汚れや古いクリームを落としてから使用して下さい」。このようにしっかりと書いてあります。ところが、トラブルを起こす方のほぼ全員が一度も古いクリームを落とさずに、重ね塗りを繰り返しています。
女性の化粧と一緒で、クレンジングをせずに、上塗りし続けたらバキバキに割れます。液体クリームは使いやすさの半面、ロウの成分が強く(だから光る)、伸びはいいものの固まってしまうとやっかいです。ゴミもカビもくっつける状態になるので、3回に1回は必ずクリーナーで落とす必要があるのです。液体クリームを使ったら、クリーナーも強力なものを使いましょう。たとえばこれです。
液体クリームの重ね塗りは厳禁
こまつ(本名・佐藤靖青〈さとうせいしょう〉)。イギリスのノーサンプトンで靴を学び、20代で靴の設計、30代からリペアの世界へ。現在「全国どこでもシューフィッター」として活動中。YouTube『シューフィッターこまつ 足と靴のスペシャリスト』。靴のブログを毎日書いてます。「毎日靴ブログ@こまつ」
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