更新日:2023年06月09日 15:48
デジタル

Apple新製品「Vision Pro」の奇怪な姿に世界騒然。Appleが人類の顔を変える日

夢のデバイス「Vision Pro」がベールを脱ぐ

 ジョブズの定型句といえば「One more thing.(あとひとつ)」で、このフレーズの後には特別な新製品が紹介されるのが常だった。今回は久々にこれが聴かれ、見た目にも印象的な新デバイスが登場。AR(拡張現実)を実現するHUD(ヘッドアップディスプレイ)の「Vision Pro」である。
WWDC23

ついに出現した夢のデバイス「Vision Pro」。日本で実機が手に入るのは来年以降と思われる

 古くはApple Watchと同時期に出現するのではないかと見られていた“ARメガネ”だが、納得できる製品ができるまでに10年規模の開発期間を要したのだろう。プレゼン映像を見る限りにおいて、そのユーザー・インターフェースは極めて洗練されている。  Vision Proをかけることで視界にウィンドウが出現し、動画を見たりビデオチャットを楽しんだり、あるいは3Dモデルを表示することも可能となる。操作は視線の検知と指のジェスチャで行うほか、Siriとの会話や、キーボードを利用した文字入力も可能だ。動画では、Macとシームレスに連携するところも紹介された。

屋外での使用は度胸が必要かも…

WWDC23

iPhoneで撮影したパノラマ写真を表示したイメージ。旅行の思い出もビビッドに蘇ることだろう

 外部の視界を完全に遮断する“没入型”ではないが、ディスプレイ解像度は片目あたり4K以上という密なもので、サラウンドサウンドやカメラの搭載により、そのAR体験は無限に拡がる。ソフトウェア開発が進めば、架空のキャラクターとの“共同生活”が可能になるかもしれない。  度入りのアタッチメントレンズを装着できるため、メガネ着用者も利用できるのが嬉しい。発売はアメリカで今年末、世界展開は来年以降が予定されている。  Vision Proの難点は、3499ドルという高価格と、全人種の顔面を等しく上書きするような、すさまじいファッション性である。ものものしい外観が思わせるのはディストピア映画だ。状況に応じて外向きのレンズ透明度を変更できるようだが、花粉症やコロナ対策でマスクを着用していれば、その姿はまるでサイボーグとなる(※追記:レンズ透明度の調整は、外向きのディスプレイに、装着者のアバターを電子的に表示する仕組みで行われる。)。  機密保持のためか、あるいは笑われることを嫌ってか、Vision Proのプレゼン映像には、屋外で使用しているシーンはなかった。「飛行機で映画を観る」というユースケースは提示されているが、通勤電車でかけるのには多少の度胸が必要だ。化粧が落ちたり、髪型が乱れたり、部位によってはアルコール消毒が難しかったりと、公共空間に持ち出す際の懸念は数多い。
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「平成時代の子ども文化」全般を愛するフリーライター。単著に『多摩あるある』と『オタサーの姫 〜オタク過密時代の植生学〜』(ともにTOブックス)ほか雑誌・MOOKなどに執筆
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