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キャリア30年の超ベテランライターが「Chat GPT」に畏怖する理由

句読点を入れるポイントも、勘所を抑えている

 これらの圧倒的な “技術” を鑑みて、いの一番に脅かされるのは「記事系」の文体を中心とするライターなのでは……と直感した。  私がまだ駆け出しとして『日刊ゲンダイ』の準専属記者をやっていたころ、上司から「新聞の記事は文字数が相当に限定されるから、接続詞は極力使うな、4行以内に必ず読点 (。)を入れろ」と叩き込まれてきた。  Chat GPTが “執筆” する原稿は、そこらへんが──読点どころか句点 (、)の挿入箇所もまさに完璧で、じつに読みやすい。  しかも誤字だって一切ない。つまり、理屈上では──取材先で目にしたこと、耳にしたことを思いつくまま口にして、それらをICレコーダだかに録音したものを何らかのアプリで文字に起こしただけで、あとはChat GPTが良質な原稿へと仕上げてくれるのだ。  Chat GPTに「人間のライターはもはやChat GPTには勝てないのですか?」と尋ねてみると、 自動生成される高品質な文章:Chat GPTは大量のトレーニングデータを元に学習しており、高度な文章生成能力を持っています。そのため、時間や労力をかけずに短期間で大量の文章を生成することができます。 そのため、時間や労力をかけずに短期間で大量の文章を生成することができます。これにより、ライターにとっての競争相手になる可能性があります。 (中略)しかしながら、人間のライターにはいくつかの利点も存在します。(中略)人間のライターには独自の価値や能力があり、特定のニーズや要求に対応する上で重要な存在です。  ……と慰めてくださった(謙遜という概念まで学習しているのか…と、それはそれでまた背筋に冷たいものが走りもしたのだが)。  ただ、文字起こし原稿内にあった、たとえば「一気にブワッと湧き出てきて〜」みたいな表現は確実に容赦なく削除されるので、人間が書いた文章ならではの “ウエット感” のようなものが同時に失われてしまうのも事実である。  だからこそ、文字数の限定がシビアな紙媒体──とくに新聞や週刊誌とは高相性なのだ。
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人間のライターが生き残る道とは?
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大阪府生まれ。年齢非公開。関西大学経済学部卒業後、大手画材屋勤務を経てフリーランスに。エロからファッション・学年誌・音楽&美術評論・人工衛星・AI、さらには漫画原作…まで、記名・無記名、紙・ネットを問わず、偏った幅広さを持ち味としながら、草野球をこよなく愛し、年間80試合以上に出場するライター兼コラムニスト&イラストレーターであり、「ネットニュースパトローラー(NNP)」の肩書きも併せ持つ。『「モテ」と「非モテ」の脳科学~おじさんの恋はなぜ報われないのか~』(ワニブックスPLUS新書)ほか、著書は覆面のものを含めると50冊を超える。保有資格は「HSP(ハイリー・センシテブ・パーソンズ)カウンセラー」「温泉マイスター」「合コンマスター」など

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