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非正規率は民間企業より高いケースも「手取り月20万円未満」非正規公務員の苦境

公務員なのに…手取り11万円の実態

 会計年度任用制度は、あらゆる公務員の仕事に広がっている。なかには、子どもの命を預かる仕事なのに、年収200万円程度の「ワーキングプア」の水準で働く人もいる。  近畿地方の児童相談所や一時保護所の指導員として働く佐藤健一さん(仮名・50歳)は、給料の手取りは11万円程度だ。 「日給が積み上がって月給になるので、出勤日が少ないと給料が下がります。一時保護所に子どもがいなくなると、『この日は休んで』と言われることもあります。もちろん給料は出ません」  児童相談所に付設する一時保護所に来る子どもは、複雑な事情を抱えている。なかには虐待の体験を打ち明けられることもあるという。

手取り20万未満…忙しい日は仮眠を取る時間もない

非正規公務員 首都圏の一時保護所で働く井上節子さん(仮名・44歳)は、保育士の資格を持つ。シングルマザーで子ども一人を育てているが、給料は手取りで20万円を切る。年2回のボーナスを合わせても、年収は300万円に届かない。 「月に3回ほど宿直勤務があり、昼の12時に出勤して、退勤は翌日昼。忙しい日は仮眠を取る時間もありませんが、支給される給料は2日分だけです」  一方、正規職員で働く人には夜勤手当てが支給されている。ある正規職員は、井上さんの給与額を知って「どうやって生活しているんですか」と聞いてきたという。 「正規の人も、非正規の人もお互いの給料を知らない。せめて、年齢と経験によって給与額を変えてほしい」  地方の市役所で事務職として勤務している佐藤かなさん(仮名・45歳)は、自宅近くに住む親が夕食の負担をしてくれていて、何とか生活をしている。 「非正規職員は、年度ごとの契約が更新されないと困るので、上司に意見が言えない。使い勝手がいいんだと思う」
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民間企業より多い公務員の非正規率
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’79年、高知県生まれ。早稲田大学第二文学部卒。「THE JOURNAL」「週刊朝日」編集部などを経て、現在はフリーランス記者

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