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非正規率は民間企業より高いケースも「手取り月20万円未満」非正規公務員の苦境

格差解消のための法律なのに

 非正規公務員として働いた経験や研究者の有志らが2021年4月に立ち上げた組織がある。公務非正規女性ネットワーク(通称・はむねっと)。ハロワークや保育園、図書館などの行政職の最前線にいる非正規公務員が抱える働く環境の改善に、取り組んでいる。  はむねっとの渡辺百合子代表が語る。 「2020年4月に始まった会計年度任用制度は、正規職員との格差解消を目的に導入されましたが、現実には1年間の有期雇用契約です。翌年度の再任用は、雇用者側のみが決定権を持っています。格差解消どころか、公的機関でフルタイムで働いているのに生活できない『官製ワーキングプア』を固定化しているのです。  会計年度任用制度による非正規化は、児童相談所の職員や婦人相談員、役所の窓口業務など、もともと女性職員の比率が高い職場で広がっています。女性が人件費削減のターゲットになっていることは明白です」

アンケート調査で9割以上が不安

非正規公務員

はむねっとの様子。一番左=渡辺百合子代表/提供:はむねっと

 はむねっとが実施した非正規公務員を対象にしたアンケート調査でも、9割以上が女性に上ったという。また、同調査では「1年ごとの更新に不安定さを感じる」といった回答が、多数寄せられた。「毎年3月末で雇用契約が打ち切られることは、働く人のメンタルにも悪い影響を与える」と渡辺氏は語る。 「雇用が不安定であるために、上司に意見を言うことも難しい。妊娠すれば、次年度の任用はしてもらえない可能性が高い。正規職員よりも重要な仕事をしているのに、給料は半分から3分の1以下ということも常態化しています。  雇用環境の悪化は、サービスを受ける側の住民の不利益にもつながります。このままでは、日本の図書館や児童相談所などは機能しなくなるでしょう。今の状況では、非正規公務員の人たちは、一斉ストライキを実施して、自分達の身を守るしかありません。会計年度任用制度は、今年で4年目を迎えます。政府関係者や国会議員は、貧困の原因となっているこの制度の問題にもっと関心を持ってほしい」  国が貧困を生み出す仕組みを容認してはいけない。 <取材・文/西岡千史>
’79年、高知県生まれ。早稲田大学第二文学部卒。「THE JOURNAL」「週刊朝日」編集部などを経て、現在はフリーランス記者
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