仕事

一日17時間拘束で休みゼロ…美容師の“超絶ブラック”環境。半数以上が3年もたない

研修制度が見直されるも、不満は払拭できず

 2019年、36協定に関する労働基準法の改正を受けて、美容業界も労働時間削減へと乗りだした。佐々木さんのいた大手美容室チェーンでも上層部から「練習のために新人に残業させるな」とのお達しがあり、研修時間が見直されることになったそうだ。  しかし、給料は労働の負荷に対して見合う額ではなく、積もり積もった不満は払拭しがたかった。「やりがい搾取されていた」と佐々木さんは当時を振り返る。すり減るような日々に耐えかね、大手美容室チェーンを退職した。  今度はゆるやかに働ける環境を求めて、佐々木さんはフリーランスに転身。カット・カラー・パーマなど一通りの技術を身につけているスタイリストは、個人事業主として特定の美容室と業務委託契約を結ぶという働き方ができる。あるいは、シェアサロン(面貸し美容室)で席を借りて、利用料をサロンに払い自由な時間で客をとるという働き方もできるのだ。  佐々木さんはフリーランスとして複数の美容室で働いたのち、数年前に現在の店舗に落ち着いたという。

フリーランスになったことで1日の拘束時間は激減

美容師 現在、佐々木さんは小規模美容室チェーンの店舗で店長を務めているが、正社員ではなくフリーランス契約だ。給料は完全歩合制となっており、施術の歩合に加えて店長業務に対する歩合も支払われる。営業時間は10時から20時までだが、フル勤務だけでなく、早番や遅番のシフトも自由に組める。 「昔と比べたら、体力的にはかなりラクになりました。月の休日日数は8日前後と、前いた店と変わらないけれど、講習会などのイベントへの参加は強制ではなくなったので、休日はしっかり休めてます」  また、勤務形態以外の面では、こんな違いもあったという。 「前に勤めていた大手チェーンは、1店舗に20~30人のスタイリスト、10人のアシスタントがいるザ・縦社会でした。人数が多いと派閥ができてスタッフ同士ギスギスしてしまうし、自社プロデュースのヘアケア用品の販売ノルマも課されていたので、お客様に営業をかけること自体がストレスになっていました。今はスタイリスト数名でほどよい距離感を保てる環境ですし、販売ノルマもないので、本来の施術や接客に集中できています」  佐々木さん自身、気持ちに余裕ができたことで、若手への接し方を振り返るきっかけになったそうだ。 「昔は仕事に人生を捧げてナンボみたいなところがあったけれど、今の子は仕事と同じかそれ以上にプレイベートを重視しているということを理解しないといけない。それに、上から目線な指導じゃなくて、その子の個性を尊重して、いいところを褒めたほうが成長してくれると、これまでの経験で気づかされました」
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入社から半年でスタイリストデビューの道も!?
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