更新日:2023年07月16日 17:40
お金

回らない「魚べい」が好調。いち早く“回転レーンを廃止した”先見の明

「回転レーンの廃止」が業績回復に貢献

売上高の推移を見ると、創業以来拡大を続け2008/3期には売上高287億円となりました。しかしその後はリーマンショックや競合の台頭などで縮小に転じ、2011/3期には225億円まで落ち込みます。 そんななか売上高に占める注文率が8割を超えたことをきっかけに回転レーンの無い高速レーン形式の店舗を増やしたところ、業績はV字回復したようです。 国内店舗の3分の2を超える108店舗を“廻らない回転寿司店”にした2018/3期には売上高が400億円にまで伸びました。その後2021/3期はコロナ禍で業績が悪化しましたが、2022/3期からは寿司チェーン人気やロードサイドという店舗立地が功を奏し、2023/3期には売上高546億円となりました。海外でも廻らない形式の店舗を主としています。

低コスト化が低価格設定を可能に

店舗数では海外の方が多いですが、売上高は直営で展開している国内(国内468億円・海外78億円)がメインであり、業績の伸びは高速レーン方式の店舗が国内の消費者にウケたことが主要因です。消費者の「魚べい」に対する評価を見てみると(1)ネタが良い、(2)安いという、主に2つの意見が見られます。 (1)に関して、高速レーンで運ばれる寿司は握りたての寿司であり、回転レーンで運ばれてくる商品のようにネタは乾いていません。回転レーン用に無駄に作る必要がないため、品質に力を入れられるのでしょう。 (2)に関しては2貫で税込110円をベースとした価格設定が安いという印象を与えているようです。回転レーンの廃止は廃棄ロスと、捨てられる寿司を作るという無駄な作業を削減するのに役立っており、低コスト化が低価格設定を可能にしたといえます。 例の事件を機にスシローはレーンに流す寿司を注文品に限定する方針に転換しましたが、実はコスト削減の側面もあると考えられます。 回転寿司の回転レーンはもともと寿司ネタの宣伝効果のような役割を果たしていました。しかし現在ではどの店舗でもタッチパネルが設置されています。高精彩で多くのネタが表示されるタッチパネルのほうが宣伝効果も大きく、高速レーンを廃止しても客足が遠のくことにはならなかったのでしょう。
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狭小店舗の開発を進め、さらなる拡大を目指す
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経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 Twitter:@shin_yamaguchi_

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