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ルフィ事件はなぜ防げない? 特殊詐欺の課題と対策を専門家に聞いた

“固定電話離れ”できないことが特殊詐欺の温床に

 なぜスマホではなく固定電話が特殊詐欺事件のきっかけとなっているのか。その根本の理由としては固定電話のセキュリティの脆弱性があるという。  前出の佐々木氏が語る。 「一部機種にナンバーディスプレイ機能が搭載されていないことも要因ですが、それ以上に高齢者は“固定電話離れ”ができないのが理由です。電話番号を変える、固定電話をなくしてスマホだけにする、固定電話からの電話はすべてスマホに転送して、スマホのセキュリティで怪しい番号は自動的にブロックといった対策が理想ですが、昔からの友人、知人との連絡先はすべて固定電話で、スマホの操作は慣れないという高齢者はとても多いです」  つまり、「固定電話をなくしましょう」というのは、現実的ではない。  では、なにかできる対策は? 「たとえば、具体策のひとつとして挙げられるのが、対策ツールの導入です。これは怪しい電話番号をリスト化することで、特殊詐欺の可能性のある番号からの着信を自動的に拒否するという仕組み。トビラフォンなどがよく使われています。  この他にも、迷惑電話防止機能付き電話機というものがあります。電話番号に登録されていない不明な発信者に対して『この電話は録音します』と自動的にアナウンスするというもので、Amazonで1〜2万円で購入できます。実行犯はその音声を聞いて『この家は騙すことはできないな』と敬遠します。ただ、こうしたツールの知名度も普及度も未だに低いというのが現状です」
sagiaka

着信があると事前に登録した番号リストから「(電話を出ても問題のない)許可番号」「注意する電話」「迷惑電話」と表記される

防犯の一丁目一番地は固定電話から

 佐々木氏によれば、防犯ツールの導入そのものが未然に被害を防ぐ意識を醸成するのだという。 「以前、私の知り合いに迷惑電話防止機能付き電話機をプレゼントしたところ、その方は『早く詐欺の電話がかかってこないかな…』と楽しみにしているようでした。これは半分冗談で半分本気。防犯ツールを導入していることで詐欺への意識が高まったのです」  伊藤弁護士も、最新の手口を把握するのは容易ではないと解説する。 「近年相談として増えているのは、『老後2000万円問題』に不安を感じた人が騙されてしまったという相談です。投資アドバイザーを名乗る者に誘導され、現金を預かって運用すると言われ、現金を送金してしまうのです。こうした時事的なニュースは詐欺のフックにされやすいですね。すべてを防ぐのは現実的ではありません。固定電話にも、携帯電話のような電話の着信自体をブロックするような抜本的な詐欺対策が必要だと感じます」  導入するのに、そこまでの手間やコストはかからない。自宅に、あるいは離れて住む両親に。特殊詐欺グループの餌食にならないためにも、ぜひ覚えておきたい。 取材・文/日刊SPA!編集部
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