仕事

“飽和状態”のホームセンター業界。勝ち抜く条件は「専門性」か

“強力なライバル”が次々と出現する日用品分野

 日用品を主力とした場合、中長期的には他店との差別化が図りづらく、集客力を高めることができません。これが強みを発揮できない最大の要因だと考えられます。
ホームセンター市場規模

ホームセンター市場規模 ※日本DIY・ホームセンター協会「年間総売上高とホームセンター数の推移(推計値)」より

 店舗数は年々増加していますが、売上高は2003年あたりから横這いが続いています。ホームセンターはシェアを奪い合う苛烈なマーケット。DIYや園芸など、ホームセンターが注力すべき領域で競合に引けを取ると、店舗としての魅力を発揮することができません。  しかも、日用品を得意とするケーヨーには別のライバルがいます。ドラッグストアです。経済産業省がまとめたドラッグストアの商品別販売額を見ると、家庭用品・日曜消耗品の販売額は2020年に前年比11.6%増の1兆1471億円と急増。その後もほぼ横這いで推移しています。
ドラッグストアにおける家庭用品・日曜消耗品の販売額

ドラッグストアにおける家庭用品・日曜消耗品の販売額 ※経済産業省「商業動態統計調査」より筆者作成

 ドラッグストアの市場規模は右肩上がりに伸びていますが、その分店舗数も増加しています。1店舗当たりの売上高はほとんど変化がありません。価格競争力が強い業態のため、市場を作っているというよりは、コンビニやスーパー、ホームセンターの市場を奪っていると見ることができます。  もし、ケーヨーが日用品という領域で強みを発揮し続けようとするのであれば、徹底的な価格競争力をつける必要があり、消耗戦を強いられることになります。

建デポの買収が奏功したコーナン

コーナン ホームセンターは独自の武器を持たなければならなくなりました。それに成功しているのが、コーナン商事です。コーナンは2019年にLIXILグループの建材卸である建デポを240億円で買収しました。  買収当時、コーナンPROという店舗を75店舗出店しており、プロ向け商材の強化を図りました。この経営判断が奏功します。  2023年2月期のコーナンは、消費者向けのホームセンターの売上高は前期比0.9%の減収となりました。しかし、プロ向けは8.8%の増収。連結では1.8%の増収となったのです。
コーナン業績

コーナン業績 ※決算説明資料より

「ハウスキーピング」が伸び悩んでいるのは、コーナンも同じ。2023年2月期のこのカテゴリの売上高は0.8%減少しました。弱含んだ分を、プロ向け商材を中心とした商品カテゴリで補いました。
コーナンカテゴリー別売上高

コーナンカテゴリー別売上高 ※決算説明資料より

 ホームセンターにとって「あの店に行けば必要なものが揃う」という、消費者が足を運ぶ理由を作ることは極めて重要です。そのブランドを構築すると、価格競争力の強いECショップなどの競合にも勝てるためです。
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「フランチャイズ加盟」で事業ポートフォリオを強固に
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フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界
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