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回転寿司から「100円サーモンが消えた」理由。ウクライナショック、輸送コスト、円安で価格高騰!

 コロナ禍をきっかけに大きく変容した回転寿司業界。原油高やコンテナ不足、円安にウクライナ戦争などが原因で、サカナをめぐるロジスティクスは一変したのだ。コロナ以前のような安くて美味しい寿司を手軽に消費できる時代は終わった。サーモンや甘エビ、エビといった定番ネタは今ではもう100円で食べることはできないのだ。流通の現場ではいったい、何が起きているのか7月に『回転寿司からサカナが消える日』(扶桑社新書)を上梓した水産アナリストの小平桃郎氏が解説する(以下、同書より一部編集のうえ抜粋)。
サカナが消える日書影

世界情勢の混乱で激変する魚のロジスティクスについて綴った『回転寿司からサカナが消える日』(扶桑社刊)

回転寿司チェーンの値上げラッシュの背景

 2022年、庶民の味方だった回転寿司チェーンが軒並み価格変更に踏み切ったことは皆さんにとっても印象的だったのではないでしょうか。業界最大手のスシローは10月から一番安い皿を10円値上げすることを発表。くら寿司も110円皿を減らして220円皿を増やす方針を打ち出し、はま寿司も「平日寿司一皿90円」を終了させるなど、各社は値上げに動きました。私の実感としても、回転寿司では最近、150円や300円などの価格帯のメニューが明らかに増えています。  一方では、同年6月にスシローが「うに」を110円で提供するというキャンペーンを打ち、消費者からは歓迎されました。ところが一部店舗では、キャンペーン期間中にもかかわらず肝心のウニの品切れが相次ぎ、ネット上で批判にさらされるという一幕もありました。実は、回転寿司業界で同時に発生した値上げと欠品という2つの事象は、日本の水産業界で巻き起こっている異常事態を鏡のように映した結果と言っても過言ではありません。
うに

スシローはうにのキャンペーン期間中にもかかわらず品切れが相次ぎ、批判を浴びた

値上げの背景にあるのは…

 まず、値上げの背景にあるのは、テレビや新聞で報道されている通り原材料費の高騰です。食品の値上げラッシュが続いていますが、なかでも、魚介類の値上げ幅は特に顕著です。  2022年6月の消費者物価指数では「食料」が前年同月比4.1%の上昇となりましたが、なかでも「生鮮魚介」に限っては、14.8%も高騰しているのです。原価率は50%前後といわれる一方で、営業利益率10%以下というハイコスト・ローリターンの回転寿司業界で、このレベルの原材料費高騰はまさに一大事です。値上げに踏み切るチェーンが相次ぐのも無理はありません。  しかし、回転寿司各社による値上げはすぐさま、売り上げに負の影響をもたらしました。大手チェーンの2022年12月の売り上げを見ると、くら寿司は前年同月比で90%前後、スシローは同80%前後にとどまっています。「安い、旨い」がウリの回転寿司業界での値上げは、直ちに客足に影響したようです。  一方で、その時点では値上げを見送っていたかっぱ寿司は前年同月比100%超と、売り上げ増を達成しています。とはいえ決して手放しで喜べる状況ではなさそうです。同チェーンを運営するカッパ・クリエイトの2023年3月期第3四半期決算では、13億円超の営業損失を計上しています。原材料費が高騰する中での値上げ回避が赤字の一因であることは、想像に難くありません。
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水産物価格高騰の原因は……
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‘79年、東京都生まれ。東京・築地の鮮魚市場に務める父の姿を見て育つ。大学卒業後、テレビ局ADを経て語学留学のためアルゼンチンに渡り、現地のイカ釣り漁船の会社に採用され、日本の水産会社との交渉窓口を担当。‘05年に帰国し、輸入商社を経て大手水産会社に勤務。‘21年に退職し、水産貿易商社・タンゴネロを設立。水産アナリストとして週刊誌や経済メディア、テレビなどに寄稿・コメントなども行っている。

回転寿司からサカナが消える日

“買い負け”するニッポンの食卓


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