恋愛・結婚

33歳で“初めての彼女”ができた男性が歩んだ苦難の人生。「自殺することも考えた」

母の死で「生きる意味がなくなってしまった」

 そんな辛い日々の中、心の拠り所にしていたものがあった。 「普通の家とは違うということを見せつけられるような気分になるので、テレビは処分してしまいました。スマホもありません。娯楽といえば歴史小説を月に1回、古本屋で買って読むことぐらいでした。小説を読んでいる時だけは現実から離れていることができたんです」  そして淡々と過ごす奥田さんの生活にも変化が訪れる。 「僕が31歳の時に母が亡くなりました。晩年はこちらが話しかけても聞こえているのかさえわからない状態でした。それでも亡くなってから母の存在は大きかったことを思い知らされましたね。空っぽになってしまった感じというか、生きる目的がなくなってしまったんです。やることもありませんし、仕事もやったことがないので、自分にできるとは到底思えませんでした。1人になってからの数ヶ月間は毎日がただただ空虚で、自殺することも考えました

徐々に人間らしい生活を取り戻していく

落ち込む奥田さんを救ったのは、いつも良くしてくれていたアパートの隣の部屋に住んでいる女性だった。女性は市役所に相談してくれ、様々な理由で社会に出ることが出来ずにいる若者を支援しているNPO団体を紹介してくれた。 「そこに通うようになって、他人との接し方を少しずつ覚えていき、ヘルパーの仕事も紹介してもらいました。自分には社会に役に立てることなんて何もないと思っていたんですが、これまでの介護経験を活かせる仕事でした」  少しずつ、社会生活を身につけていく中で、新たな趣味も生まれた。 「会社の同僚にバーに連れて行ってもらったんです。以来、休みの前日にそこに通っては、飲んだことのないカクテルを試すようになりました。ああいう場所に通うということ自体が楽しかったんです。少しずつ、他の常連の人たちとも話すようになっていきました」  その店で、保険の営業をしている女性と出会う。 「とてもよく喋る人で、僕はいつも聞き役でした。仕事の話や一緒に働いている人のこととか、色んなことを話してくれました。愚痴も多いですが、世の中のことを知らないので、そういう話を聞いているのも面白くて。ちょっと酒癖が悪いところがあって、他の常連さんには『大変じゃない?』と心配されましたが、話を聞いていること自体が楽しくて、僕は全然平気でした
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人生初の彼女に対して不安も多いが…
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込み入った話や怖い体験談を収集しているサラリーマンライター。趣味はドキュメンタリー番組を観ることと仏像フィギュア集め
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