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「母の名前を見るだけで吐いてしまう」20代女性を追い込んだ母親の“陰湿な対抗心”

「娘の逆境」を喜ぶように…

 糸井氏の母親は娘に対して陰湿な対抗心を抱き続け、特に娘の逆境を喜んだという。 「本当に些細なことなんですが、たとえばフラれたとか、試験であてが外れたとか、ドジなことがみんなにバレたとか、そういう話を聞きたがりました。私がそういうピエロを演じると、母親は満面の笑みで聞いてくれて、『それでそんときどう思ったん?』などと興味津々でしたね。私が悲惨な目に遭うことを心から欲していたように思います」  翻って、糸井氏の努力が実った話、成功した話は徹底して無視するか、自分の人生哲学を押し付けてマウントを取りにきた。

学歴コンプレックスがあった?

「この地域から早稲田大学に入学するって、あまりないんですよ。私が合格したとき、地元でちょっとしたニュースになって。地域の人がお祝いパーティーみたいなのをやってくれたんですね。母親は人前ではニコニコしながら、腸が煮えくり返っていたんでしょうね。  パーティーの主催者に『まだ未成年ですんで、そんな調子に乗せんといてください。大学に入れたのだって皆さんの支えがあったからで、本人は何もしとりません。甘やかしたらいかんと思います』みたいなのをまくし立てて、みんな目が点でした。謙遜の域をはるかに超えて、『私がこの子くらいのときは……』と始まっちゃって」  学歴については、母親にもコンプレックスがあったのではないかと糸井氏は話す。 「母親の実家は昔、呉服屋かなにかをやっていたようですが、事業が傾いたらしいんですね。母親は学力で入試に落ちたのですが、どうも記憶が改ざんされているのか、『貧乏になったから落ちたんや』みたいなことをいつも言っていました。  母親は学びたいことがあったそうですが、結局高卒で終わったので、私に対して『あんたはのほほんと大学なんて行ってずるい』という妬みがあったのは確実でしょうね」
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ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

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