これらは『THE FIRST TAKE』のコンセプトでは、まずお目にかかれません。失敗や想定外の事態にアーティストがどう対応するか。最も本質があらわれる可能性の芽を最初から摘んでしまっていることが残念なのですね。 　そのかわりに学芸会みたいなドキドキ感のアトラクションとして音楽が踏み台にされてしまっている。問題はピッチ補正によって視聴者を騙していることではないのです。 　っていうか、どんだけピッチ補正かけてもダメな歌はダメなんだけどね。 文／石黒隆之 音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4