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「半永久的に人目に触れない場所」も。香川県の山奥にあるテーマパークが持つ特殊性

かつては現在の「2倍の面積」だった

オリエンタルトリップ

かつてのガイドブックに乗っていたネパール寺院「サンティナート」。これが人目に触れず山奥にあった。

さらに調べてみると、オリエンタルトリップの遺跡らしさがもっと浮かび上がってくる。 この「NEWレオマワールド」、「NEW」と名付けられていることからも察することができるとおり、実は開閉園を繰り返している。かつては、ただの「レオマワールド」が一度閉園し、それが再度開園して「NEW」になったわけだ。この開園と閉園はもちろん「オリエンタルトリップ」にも影響を与えた。 実は、現在私たちが見ることのできる「オリエンタルトリップ」は当初の「オリエンタルトリップ」の半分にしかすぎない。かつては現在の面積の2倍の面積があって、その中に、スリランカの寺院や、タイの水上マーケットなどがあったのだという。もちろん、こうした遺跡も、現地の職人が手作りしたのだというから驚きだ。 それらは現在見ることができず、ただ人目につかないまま、香川の山奥の中に埋もれている。どうやら最近、その土地は太陽光発電のために壊され、ソーラーパネルが一面に設置されたというのだが、人目に触れずに香川の山奥にこうした遺跡が眠っていたときがあったのだ。 現地の人が作り上げたスリランカの寺院が人目に触れないままの状態で香川の山奥に眠っているーー。これって、もはや「遺跡の模型」じゃなくて、もはや「本物の遺跡」ではないか?

「遺跡になったテーマパーク」が点在しているかも?

「遺跡」という定義を調べてみると、それは「人間が活動した痕跡」のことだという。なるほど、そう考えると、あながち、このNEWレオマワールドに眠っている仏像や、かつてあったネパールの寺院なども、本当の遺跡だといえる気がしてならない。それは、テーマパークを作る、という人間の活動が生み出し、そしてなぜだか残ってしまった「遺跡」なのだ。 テーマパークというと、私たちはどうしても「つくりものがある場所」とイメージしてしまうかもしれない。しかし、そのテーマパークもまた、人間の活動の痕跡であることには疑いがない。逆に言えば、どんなテーマパークだって、本物の「遺跡」になる可能性を秘めているということだ。 私はふと想像してしまう。日本全国各地に点在している廃墟となったテーマパークもまた、遺跡のように、ただ誰の目にも触れられずにひっそりとその場所にあるのかもしれない。それは、動物の模型かもしれないし、あるいはアトラクションを支えた無骨な鉄筋コンクリートかもしれない。しかし、私たちの眼に触れないところでそれらはひっそりと存在している。 なんだか、今、私がこれを書いているときにも、そうした無数の遺跡たちが暗闇の中でたたずんでいる考えると、なんだかぞわぞわとした感覚を覚えるのだ。 <TEXT/谷頭和希>
ライター・作家。チェーンストアやテーマパークをテーマにした原稿を数多く執筆。一見平板に見える現代の都市空間について、独自の切り口で語る。「東洋経済オンライン」などで執筆中、文芸誌などにも多く寄稿をおこなう。著書に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』(集英社)『ブックオフから考える』(青弓社)
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