仕事

過熱する販売合戦で「お客を盗られた」。ズル過ぎる“売り上げトップ社員”に天罰が下るまで

同期の進言によって発覚した問題

 飛ぶ鳥を落とす勢いで快進撃を続ける矢崎くんですが、ある日、他の複数のスタッフからとある進言があったそうです。 「他のスタッフから『矢崎さんにいつもお客さんを盗られてしまう』という情報が入ったんです。あるスタッフが言うには、接客を始めようとしたとき、よく最寄りの内線電話が鳴るらしいんです。それで内線に出てみたら話中で、客の所へ戻ると決まって矢崎くんが接客しているらしいのです。言葉は悪いですけど、いわゆる”横取り”ですかね」  気になった陣内マネージャーは、勤務後に矢崎くん以外のスタッフを集めヒアリングした所、ほとんどの新人が経験済みだったとか。 「たしかに矢崎くんの商品知識や話術は誰よりもずば抜けていて、ほとんどの客が何の違和感もなくクロージングまで耳を傾けている現状なんですよ。でもね、僕としては他のスタッフも一緒に成長してほしいので、等しく接客の機会を与えたいですし、矢崎くんのやり方はどう考えても少し利己的でズルいやり方なんですよ。本人も悪気はないようなのですが、ちょっと度がすぎますかね……。良い解決策はないものかと、正直ちょっと頭が痛い所です」

裏方で落ち着くため物流部門へ

家電量販店 その事態を重く見て、上長とも話し合うこととなった陣内マネージャー。その結果、矢崎くんは物流センターへ異動することになったと言います。 「矢崎くんの接客は目を見張るものがありました。ですが、見てわかるぐらいに競争心がギラギラあふれている様子だったので、裏方でちょっと落ち着いてほしいなという願いを込めて、物流のほうへ異動してもらいました」  異例の着任後すぐの異動辞令を受けた矢崎くんは、晴天のへきれきのような表情を浮かべながらも、素直に受け入れ店舗出勤最終日の時にあいさつに訪れたと言います。
次のページ
異動させられるも残る後悔
1
2
3
愛犬ベルクちゃんと暮らすアラサー派遣社員兼業ライターです。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営
記事一覧へ
おすすめ記事
ハッシュタグ