更新日:2023年09月23日 15:10
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藤井聡太、秒読みには「経験と直感力で対応」。居飛車vs振り飛車“頂上決戦”で見せた

過去の戦型は、すべて居飛車vs振り飛車の対抗形

菅井竜也八段

 両者の対局は本局が13局目。対戦成績は藤井8勝、菅井4勝。戦型はすべて菅井が飛車を振り、三間飛車5局、中飛車5局、四間飛車2局だった。戦型選択に注目が集まるなか、振り駒で先手番となった菅井が選択したのは、飛車を自陣から見て左から4筋目に振る「四間飛車」。両者の囲いは、後手番の藤井が「天守閣美濃」という形から5筋の歩に位を取り“厚み”を重視したのに対して、菅井は玉を深く潜って“堅さ”で勝負する「穴熊」を選択。 「灼熱の熊本で穴熊です。これは熱い戦いになりますね」。解説の豊川孝弘七段が得意の名調子で盛り上げつつ、指し手が進む。52手目、藤井が8六歩と飛車先の歩を突き捨てたところから本格的な戦いが始まった。すでに両者の持ち時間はない。JTプロ公式戦は、1分×5回の考慮時間をのぞいて、1手30秒未満で指す、超早指し棋戦という特徴を持つ。

藤井聡太、秒読み将棋での心境は?

藤井聡太JT杯覇者

 秒読みに追われる中、プロ棋士が頭をフル回転させて指し手を選ぶ姿は、将棋を観戦していて最もスリリングで熱い瞬間だ。実際、どんな心境で戦っているのか、対局前のインタビューで藤井に尋ねたところ以下のように回答した。 「思考が後手後手に回ってくると苦しくなります。ある程度、相手の手を予測して、瞬発的に対応したり、プランを複数用意する必要があります。(残り10秒で新しい好手が見えたり、読んでいた手が実は悪手だったことがわかった場合、軌道修正したりはするのか? という記者の問いに対して)そうですね、そこが将棋の一番難しいところで、そうしたことは多々あります。決してパニックにならずに、勘といったら何ですけど、過去の経験や直感力で対応する、ということが多いです。」  解説の豊川七段も「時間の短い将棋は、長嶋茂雄的といったら変だけど、動物的勘によるところが多い。当然、時間が短いと読みの精度は落ちますが、“逆転のゲーム”といわれる将棋の面白さを、秒読みで感じていただければ」と語るとおり、119手で菅井が投了するまで、白熱の早指し対決が延々と続いた。
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投了図 118手目 後手△2三玉まで
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