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日曜劇場『VIVANT』福澤監督がノベライズ本の特別インタビューで語った制作の裏側「ラジオで“別班”の話を聞いたとき、すごくワクワクした」

日本のテレビドラマ史上、体験したことのないスケール感で描かれた日曜劇場『VIVANT』。その高い視聴率、無料見逃し配信の再生数の多さ、ネットやSNS上での大変な賑わいぶりなど、まさに社会現象となったドラマである。この大人気ドラマの原作・演出を務められた福澤克雄監督に、その裏側を語ってもらった。 ※ノベライズ本『日曜劇場 VIVANT 下』特別インタビューを一部抜粋したものです。
VIVANT

『日曜劇場 VIVANT 下』(扶桑社文庫)

自由度の高いオリジナル作品

――第1話からどのような物語なのか、まるでわからないまま『VIVANT』の世界に引き込まれていきました。監督ご自身のアイデアによるオリジナルストーリーゆえだと思います。なぜこのような作りのドラマにしようと思われたのでしょうか? 福澤克雄監督(以下、福澤):今は小説とか漫画とか原作ものの連続ドラマが主流だけど、やっぱり原作を映像化するというのはいろいろと難しいんです。小説とドラマは表現としては根本的に違うものだから。そうなると原作ファンは違和感を抱くだろうし、もちろん原作サイドのこだわりもありますし。自分なりに、映像にした場合はこうしたら、というアイデアがあってもそれを簡単には反映できなかったりして、作り手としては少々窮屈な感じはあるんです、原作ものは。あと地上波の連ドラの定めとして、とにかく序盤が肝心で、まずは見てもらわないと話にならない。このドラマはこういう話で、こんなにも面白いというのを1、2話で見せなきゃならないから、原作の半分くらいをそこで使っちゃうこともあるんです。僕が今までやってきたドラマもそうでした。でも、海外ドラマだと1、2話はとにかく勢いでグイグイ押していって、一体どんな物語なのかまるでわからなかったりするんです。でも、何というか、続きが気になってしまうんです。ただ、物語がないものを見せるためには、映像自体に迫力や美しさ、衝撃みたいなものがなくちゃいけない。『VIVANT』はそういう海外ドラマ的な作りを試してみたかったというのがあって、そのためには作り手側の自由度の高いオリジナルでいこうと。そういうことです。

別班を主役にしなかったワケ

――そうは言っても、これほどの壮大な物語をオリジナルで作られるというのは大変だったことと思われますが、監督ご自身が以前から温められていたアイデアだったのでしょうか? 福澤:3、4年前にラジオで別班の話を聞いたんですけど、そのときにすごくワクワクしました。平和ボケした国だって散々言われてるけど、やっぱり日本をちゃんと守ってくれている人たちはいるんだって。それで別班というものに興味を持って、いろいろと調べて、専門家に話を聞いたりして……。やっぱり、日本とか中国、エジプト、イギリスみたいな歴史の古い国の諜報部員って存在自体がうまく隠されているらしいんです。逆にアメリカみたいな新しい国はCIAみたいに目立たせる。たしかに日本でテロは起きないなと腑に落ちることが多かったし、これはドラマにしたら面白いかもと。ただ、別班という組織を主役にすると、絶対失敗すると思ったんです。それだと別班自体のミステリアスさがなくなるし、よくある組織の物語になってしまう。それで、別班員という身分を隠し、ある目的のためにひたすら進んでいくひとりの男の物語にしようと考えました。そこから、舞台はどこで、その目的はなんなのか、相対する組織は……みたいな感じで物語をふくらませていったんです。
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日曜劇場 VIVANT 上

話題沸騰のドラマの原作オリジナル
ストーリーを完全ノベライズ

日曜劇場 VIVANT 下

「美しき我が国を汚す者は、
何人たりとも許さない」

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