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日曜劇場『VIVANT』福澤監督がノベライズ本の特別インタビューで語った制作の裏側「ラジオで“別班”の話を聞いたとき、すごくワクワクした」

若い作家を育てる“真剣勝負の場”

――基本的な物語の流れみたいなものを監督が作られて、それを複数の脚本家で仕上げていくというハリウッド的な分業制にした理由はなんでしょうか? 福澤:『VIVANT』に関しては、キャラクターの心情や一貫性よりも、シーンごとにどれだけ面白いアイデアをぶち込めるかというほうが大事だと思いました。それで若手作家を集めて、いろんな感性のアイデアを拾っていこうと考えたんです。もちろん、若い作家を育てるという目的もありました。なんでもありのドラマだから思いついたものを書いてこいって。そこで、上がった原稿を読んで、正直な感想を言う。時に彼らにとっては泣きたくなるようなことも言ったかもしれない。でも、どうなるかわからないただの練習の台本ではなく、実際に放送されることが決まっているドラマの台本という真剣勝負の場で、ぶつかり合いながら教えていった。作家を育てるという意味でも非常に有意義な作品になったと思います。

乃木というキャラクターが生まれた背景

――乃木の二重人格という設定が最初のシーンから登場したのには驚かされました。主人公をあの設定にしたのには、どういう意図があったのでしょうか? 福澤:これはもう単純な話です。普段は人の好い、あまり仕事のできない商社マンが、別班員としての正体を明かした途端、「山本ぉ」って冷酷無比な男に変わる。物語上、そうならざるを得ないわけですが、視聴者がそれを見たとき、商社マンの気弱な感じは別班員という正体を隠すための演技だと思っちゃう。それでは、視聴者は乃木を好きになれないと思ったんです。あのFも乃木という男の本来の姿なんです。弱さと強さの両方を持っている男を描きたかったので、そこにリアリティを持たせるために乃木の中にFというキャラクターを作りました。
VIVANT

『日曜劇場 VIVANT 上』(扶桑社文庫)

福澤克雄(ふくざわ・かつお) 1964年生まれ。東京都出身。慶應義塾大学法学部卒業後、富士フイルムを経て、TBSテレビに入社。監督として、多数のヒットドラマを生み出す。主な代表作に『3年B組金八先生』(第4~7シリーズ/1995~1996年ほか)、『砂の器』(2004年)、『華麗なる一族』(2007年)、『半沢直樹』(2013・2020年)、『下町ロケット』(2015・2018年)、『陸王』(2017年)、『ノーサイド・ゲーム』(2019年)、『ドラゴン桜』(2021年)、映画『私は貝になりたい』(2008年)、『祈りの幕が下りる時』(2018年)、『七つの会議』(2019年)など。
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日曜劇場 VIVANT 上

話題沸騰のドラマの原作オリジナル
ストーリーを完全ノベライズ

日曜劇場 VIVANT 下

「美しき我が国を汚す者は、
何人たりとも許さない」

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